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海外視察
ローマ&ミラノ&ジェノバ(前半)

今回の海外視察レポートは、スタッフの榎本よりお伝えします。

まず、今回の視察に至ったきっかけは、私自身現在の世界の地方の衰退に対して、興味があったことから始まります。地方から人が減り、地域経済が衰退し、街が衰退するといった地域経済の悪循環が続いています。そのような中で私は、今までのように「建物を建てる」ということだけではなく、人を呼び込む「仕掛け作り」や「工夫」に取り組むことが大事になってくると感じました。そこで私は、

 

-地域(街)の再生(今回の前半)

-都市開発による地域の発展(後半)

-人を呼び集める文化施設(後半の番外編として)

 

の3つを軸に、人を呼び込む仕掛けづくりを学ぶため、空き家先進国と言われているイタリアのローマ、ミラノ、ジェノバを視察してきました。

地域(街)の再生

皆さんはアルベルゴ・ディフューゾ(Albergo Difuuso)という言葉をご存知でしょうか? 日本ではあまり聞き馴染みがないかもしれませんが、地方の空き家を再利用して、宿泊施設とし、街全体に点在するサービスと結びつけて観光客をもてなす、分散したホテルです。アルベルゴ・ディフューゾでは、レストランや、アクティビティ等の様々な施設が垂直方向(1つの施設内)ではなく、街全体位に水平方向(街全体)に分散しており、街を巡ることによって楽しむ「街でもてなす宿泊施設」です。

私は、このアルベルゴ・ディ・フューゾと呼ばれる分散型ホテルのうち、ローマ中心部より南東に車で1時間30分ほど走ったところにあるラツィオ州ザガローロという街にある「ボルゴ・ディ・サガリ」、ミラノ中央駅より北に電車で乗り継ぎ2時間ほどのバレーゼ州にある「ボルゴ・ディ・ムストナーテ」その2つを視察してきました。

1, ザガローロ -ボルゴ・ディ・サガリ-

  • ボルゴディサガリのアクティビティ一覧
    出典: Wikihouse.com

  • 谷から望むザガローロの街

  • ザガローロ町中の小道

ローマより南東に電車で40分揺られ、更に車で20分ほど進んだ先に、このザガローロの町はあります。2つの谷に挟まれた山の尾根道に、沿って、細長くこの街は存在しています。コンシェルジュの人にこの街のことを尋ねると、人口はだいたい1万8千人程度。夏は涼しいため、ここに別荘を構える人もいるとのこと。街の主な施設としては、図書館(美術館)・チャペル・ワイン屋・ドラックストア・バーそして広場空間が点在しており、街すべてが観光施設となっています。

私が泊まった宿泊施設は町中にある空き家をきれいに改修した一軒家でした。一人で泊まるには少し大きすぎましたが、イタリアの古き良き家並みの外観、内観をそのままに、過ごしやすいようきれいに改修されていました。
例えば水回りですが、木の引き戸などは、当時のままですが床や壁は木調タイルに変更され、濡れても大丈夫なよう対応されています。実は扉もオートロックに変更されており、気づかず外出して入れなくなってしまい、遠くのコンシェルジュまでお願いしに行ったのは苦い思い出です。

  • 2Fの玩具博物館イタリア最大規模

  • 街の図書館の中庭

街の中腹に位置する、コの字型の図書館、施設をそのまま転用した2階に入っている玩具博物館は、イタリア最大規模を誇る玩具博物館とのこと。展示作品の中には宮城県石巻の小学校の子どもたちが津波で被災した小学校の部材を利用したオブジェが展示されていました。残念ながら、入ったときは私一人しかおらず、3階の図書館も閉鎖されてしまっていました。囲われた中庭は、常に開放されており、お昼ごろになると地元の子どもたちがボール遊びをしています。

  • 広場空間

街の中腹部にある広場空間では、普段は街の人々が集まり、会話をしている憩いの場として機能しています。私が丁度訪れたときは近隣学校の少年少女達による街のバレーボール大会が開催され、周辺にあるBARで軽食を買い地域住民や、この街に滞在しに来た人々と一緒になり応援していました。地域で行われる近隣のためのイベントが、そのまま観光客にフィードバックされる、まさに「街でもてなす」アルベルゴ・ディフューゾらしい光景でした。

  • お世話になったピッツェリアの店員や人々

このボルゴ・ディ・サガリにくる殆どの人がイタリア国内の人で、このとき海外からこの村を訪れたのは私一人でした。しかし、声をかければみな親切に道を教えてくれて、カメラを持って街を歩けば、写真を撮ってくれと声をかけられ、夜ご飯で知り合った人は自分の家に招待してくれて、そこの娘さんがピアノを披露してくれました。このボルゴ・ディ・サガリでは街全体が会話で溢れています。街でもてなす、ということは人でもてなす、ということ。オーナー一人の作り出したものではなく、住民一人ひとりの意識で、このアルベルゴ・ディフューゾという「交流型ホテル」が出来ているのだと感じました。

2, ヴァレーゼ -ボルゴ・ディ・ムストナーテ-

  • モンターノ氏と私

  • 忠実に再現された1500年台の建物

  • 敷地全体に広がる広大な広場

もう一つのアルベルゴ・ディフューゾはミラノ中心地から北にあるヴァレーゼに位置するボルゴ・ディ・ムストナーテ。60ヘクタールの広大な土地を買い占め、全体をアルベルゴ・ディフューゾとして整備した、いわばリゾート的な変わり種の場所です。幸いなことにオーナーのモンターノ氏に会う事ができ、更にはその敷地内を自家用車にて案内してくれました。
宿泊施設となる空き家は40ほどあり、一軒家から、一部マンションまで。全て建物は当時立っていた建物の色に塗装し直して、忠実に再現しているそうです。

モンターノ氏はヴァレーゼ出身で、もともとミラノの銀行員をしており、この広大な土地を買ったのは、「この環境を管理して後世に伝えていきたかったからで、この街にはこの景色が大事なんだ」と、しきりにおっしゃっていました。
確かに、街を歩くとまるで異世界に来たかのような牧歌的な光景が広がっており、空の広さと緑の豊かさに圧倒されました。きちんと管理されていなければ、この緑の美しい光景は見ることができなかったかもしれません。

  • 街の中腹にあるオープンカフェ

  • そこから広がる牧歌的な光景

街の中腹にあるオープンカフェスタイルのレストランは、朝から人で賑わっており、前方に広がる広大な風景と大きな空を眺めながら食事を楽しむことができます。他にもレストランは3店舗ほどありますが、朝はほとんどの人がこのカフェに集まり、地域に住む人々や、いろいろな国から来た宿泊者の人たちがここを利用するそうです。とてもサービスが良く、飲物を頼むとそれだけでお腹いっぱいになるほどの大量のおつまみがついてきます。驚いた事に、朝から夜までずっとここで過ごす人もいるそうです。

  • バーベキューやファーマーズマーケットの開かれる広場

  • バーベキューの様子
    (http://www.borgodimustonate.it/it/news-events/eventi-outdoor-al-borgo-di-mustonate)

また、広場で定期的に行われるファーマーズマーケットは、地元の人を含め、宿泊客が賑わいを見せています。
残念ながら私が行った時間帯と合わず、体験することは叶いませんでしたが、普段は右の写真のように、バーベキューが開かれ、併設するカフェ自家製のアイスクリームが振る舞われるとのこと。広大な土地を利用した開放感あふれるひと味違った、田舎のバーベキュー。今度プライベートで行く機会があれば、ぜひ体験してみたいです。

  • 馬小屋はリノベーションされ、公開されている

  • 馬小屋を利用した、地域住民、宿泊者に開かれたミーティングルーム

そして、昔から続く美しい風景、可愛らしい建物だけではなく、一部馬小屋を改修した、ミーティングルーム、電気自動車のスタンドを設けるなど、人々を呼び集めるように近代化されたシステムも組み込まれています。
このボルゴ・ディ・ムストナーテでは、イタリアの人たちだけではなく、近隣各国から人がやってくるそうです。モンターノ氏はサスティナビリティとアクセスが大事なんだと語っていて、さらには美しいこの街を枯渇させないよう、システムを含め人々が来る仕掛けを常に更新し続けることが大切だとも、力説してくれました。ザガローロの街と違い、人と人との交流は若干希薄ではありましたが、この街ではここに住む住民との交流を楽しむよりも、ファーマーズマーケットや、乗馬などのアクティビティなど、その土地ならではのイベントを楽しむことがメインとなるアルベルゴ・ディフューゾでした。

後半では、「都市開発による地域の発展」と番外編の「人を呼び集める文化施設」についてレポートします。お楽しみに!

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