海外視察2011_インチョン・ソウルレポート / 2012.04.25
海外視察_2011韓国レポート第二回ソウル_2011.10.04
第8回目は前回の仁川(インチョン)に続き、スタッフの鍵井より今回はソウルをレポートします。
2日目の韓国は、ソウル市内に入り海外建築家による建築作品と、自社の物件等を見てまわりました。
最初に訪れたのは、イテウォンにあるサムスン美術館「Leeum」へ。この美術館は、サムスン文化財団により運営され、2004年にオープンした美術館です。
韓国の古美術を常設展示するMUSEUM1(マリオ・ボッタ設計)と、国内と海外の現代美術を常設展示するMUSEUM2(ジャン・ヌーベル設計)、それから、次世代のための様々なプログラムを運営しているサムスン児童教育文化センター(レム・コールハース設計)の3つの建物で構成されています。
エントランスを入り古美術のMUSEUM1常設展示へ。EVで最上階まで進み、らせん状に下階へ順路を進む動線計画。照度の低い展示空間に対して、トップライトから自然光がそそぐ移動空間はとても心地よく、明暗の対比がとても面白い空間を演出していました。その後、ジャン・ヌーベルによる現代美術のMUSEUM2へ。 現代美術の先端性を表現した、錆びたステンレススチールとガラスの外装は、近くで見るとかなりインパクトを受けましたが、低く抑えられた建物ボリュームと 土地の高低差を利用した内部の構成により、古くからそこに建っていたのではというくらい、土地に根づいているような、懐かしい感じを受けました。
残念ながらコールハースが設計した児童教育文化センターは改修工事中のため内部には入れませんでしたが、それぞれの建築家が、その建物のプログラムに応じて、過去、現在、未来を表現し、それが空間と特徴的な外観に現れていたと思います。
次 は、ドミニク・ペローの設計による梨花女子大学キャンパスを訪れました。梨花女子大学は、ソウルで初めてのつくられた女子大であり、国内では難関校として有名なお嬢様学校です。キャンパスに入ってすぐに右手にトレンチが広がり、その両脇に教室、多目的ホール、カフェやショップが入る、その殆どが地下に埋まっ た建築です。クレパス部分は高いところで4層程のボリュームで構成され、想像していたスケールより大きく、かなり壮観で、久しぶりに建築が持つ迫力を感じ ました。
スロープの反対側は階段状の広場になっていて、食事をする人や、楽器を奏でる学生さんなど
まさに「ザ・キャンパスライフ」みたいな光景がありましたが、気取らずに利用できるこのような
場所が建物の内部にも多く用意されており、創造や出会いの場所としてとても充実した建築でした。

最後に訪れたのが、弘代(ホンデ)です。芸術大学で有名なホンイク大学を中心に広がる繁華街には、ライブハウスやクラブ、おしゃれなカフェやレストランが立ち並び、若者の熱気が溢れる、街全体がアートな雰囲気の場所です。今回ここを訪れたのは、自社のデザインによるHongDaeプロジェクト(通称:イエローダイヤモンド)の見学が目的です。クライアントはこのプロジェクトを起爆剤として街を更に活気のある場所にしたいとのいう思いがあり、インパクトのあるデザインを求められたそうです。
外皮は、黄橙色のフリットパターンが焼き付けられたガラスをSSG工法により取り付けられたものであり、半透明の外皮にすることで、建築内部の賑わいが外へと滲み出し、ホンデの街並みの一部となっている印象を強く受けました。
また、4層のボリュームを覆う多面体のファサードが、ダイヤモンドのような特徴的なフィルムを実現すると同時に、周辺の建物のスケール感と調和しており、実際に足を運ぶことで改めて学ぶことがありました。
最後に、今回はマスタープランの視察ということで、仁川(インチョン)を中心にまわりましたが、韓国ではソウルを中心に様々な街づくりが同時に進行しています。先日も釜山(プサン)に、ジョン・ジャーディによりデザインされた、300mの超高層レジデンスタワー3本を含むプロジェクトが完成し、その隣では、ダニエル・リベスキンドが手掛ける「海雲台I park」 が進行中です。

Text and photo by Takuma Kagii
海外視察2011_インチョン・ソウルレポート / 2012.03.01
海外視察_2011韓国レポート第一回仁川(インチョン)_2011.10.03 - 10.04
これまでヨーロッパ圏のレポートが続きましたが、今回の海外視察レポートはスタッフ鍵井が韓国をレポートします。
2011年秋、アジア諸国の大規模な複合都市開発を学ぶ視察を目的として、韓国の仁川市(インチョン)を訪れました。韓流ドラマやK-POPなど、日本ではすっかり韓国のエンターテーメント文化が広まり、認知されていますが、街づくりの取り組みはどのようなものなのでしょうか?短い滞在時間ではありましたが、自分なりの目線でレポートしようと思います。
韓国は国策により、2002年に経済自由区域法が制定され、翌年には経済自由区が指定されました。外資及び外国企業を誘致するため、様々な優遇制度を設けるなか、街をつくるためのマスタープランをもとに大規模な都市開発が進んでいるところです。今回はそのひとつの仁川市内にある、松島(ソンド)地区、永宗(ヨンジョン)地区、青蘿(チョンラ)地区からなる、IFEZ(=Incheon Free Economic Zone)を中心に、韓国における最新の街づくりと住宅事情についてお届けいたします。
訪れた都市、仁川は日本から約2時間半。東京‐大阪間を移動するのとほぼ同じ時間で行くことのできる、本当に近いところです。仁川国際空港の開港と共に、ソウル、プサンに続く韓国第3の都市として浮上した湾岸エリアの街仁川は、既存の市街地が広がるなかで、新たな都市開発が各地で進み、変化を遂げようとする勢いを感じました。
まず訪れたのは松島(ソンド)地区。ここには、国際業務の中心であるトレードセンターをはじめコンベンションセンター、知識基盤産業を目的とした先端バイオ団地やITクラスター等が計画されているところであり、最大5万トン級のクルーズ船1隻が接岸できるクルーズ専用埠頭を含む国際旅客ターミナルも建設中です。また、高さ600mの仁川タワーの計画も進んでいて、将来的には53.4k㎡の土地にこれらの施設と公園が整備される現在進行中の国内都市開発において最も特徴あるところです。
この他にも、居住外国人のために国内最高水準の医療サービスが受けられる仁川国際病院や、優れた人材を育成するための教育施設等が計画されているそうです。韓国の伝統的住居配置を現代風に解釈したタワーが建っていたり、海外のデザイナーならではの視点で韓国を読み解き、デザインに対するアプローチはとても参考になりました。
まだ開発の途中段階ということもあり、街全体が少し閑散としているなか、そそり立つ超高層のタワーのスケールが妙に気になり違和感を覚えながら歩いていました。おそらく、人の賑わいを感じる施設や場所がまだまだ少なかったこともあるのでしょうが、超高層のボリュームに対しての低層部の設えが若干スケールアウトしていたように思いました。更に、幅員の広い道路が各ブロックを分断している感じを強く受けました。マスタープランを見る限りでは、業務、商業、住居等のエリアがバランス良く配置され、それぞれが緑や水でつながり、豊かな外部空間がつくられているはずなのに・・・。これからの使われ方と賑わいに期待です!
そして、松島地区で最後に訪れたのは「キャナルウォーク」という名前のついた複合施設です。中央に水景がありその両側に1・2階にはカフェやショップが並び、上階はオフィスという構成です。低層に抑えられた建物のボリュームと分節された壁面、石や木を使った素材感のあるファサード。少し歩くと広場があったり、その広場から路地が続き、自然にお店に入れたりと、先ほどとは違って、歩いていて楽しい空間でした。こういった大規模な開発においても、ヒューマンスケールを大切にした、居心地の良い場所をつくることが、改めて大切だと実感しました。
次に訪れたのは、京畿道(キョンギド)の板橋(パンギョ)新都市へ。こちらの地区には各棟異なった外国人建築家がデザインを手掛けた低層の集合住宅があります。緩やかな丘陵地の敷地には、異なるデザインの集合住宅が提案されています。テラスハウス型やコートハウス型、眺望を確保しつつプライバシーを守ったものなど、デザイナーの個性を感じる住宅群でした。自分が住んでみたいなぁと思った棟が、案内していただいた方に聞くと、入居率が低いとのこと。韓国の方には、少しオープンすぎて、プライバシーが気になるみたいです。我々も、外国人デザイナーとして海外物件、特に住宅をやる時はその国の文化や生活を知ることがデザインを行う上で重要だと考えさせられました。
板橋(パンギョ)を離れ、タワー型の住宅視察のためドンタンへ。その途中に、ブンダンのカフェストリートに立寄りました。ここは、約400mにも続く並木通り沿いにカフェや飲食店が立ち並ぶ地元の方に人気のスポット。当初は空地(?)(歩道の幅が広かった)だった店舗前に、何件のお店がイスやテーブルを出し、そのうちテラスをつくったり、屋根や囲いをつけたりとエスカレートしてゆき今のようなかたちになったらしいです。テラスがあることによって店の賑わいが通りにも滲み出てきているし、みんながやることで連続感が生まれ、非常に雰囲気の良い街並みがつくられているように思えました。行政側もこの件に関しては認めたらしく、話題となり多くの人が訪れる場所になっています。

寄り道の後で、いよいよサムスンの分譲したレミアンアパートに到着しました。韓国では珍しいテラコッタを用いた外装が特徴的な高層住宅。敷地の高低差をうまく利用したランドスケープの計画が、高層住宅の足元を豊かな空間にしており、子供の遊び場や散歩道など、住民にとっての憩いの場所になっていました。タワーを見上げると・・・写真を見てもう気づいている方もいるかもしれませんが、バルコニーがない!!そういえばここまで来る途中に見た高層の集合住宅にもほとんどバルコニーがないのです。実は、韓国ではこれが一般的で、バルコニーはあるのですが窓で覆うと、居室と同等に利用できるため、既存のマンションでは居住スペースの拡張のために行われたのが始まりだそうです。新築物件でも、あるルールの下バルコニーゾーンを設定すれば、バルコニー同様容積率に算入されないといった法律が存在するのです。販売用パンフレットにも、このバルコニーゾーンが記載されているのですが、部屋として分譲してしまうそうです。このため、オフィスビルのような外観をした高層住宅が多いのも特徴的なところです。
また日本では小規模の集合住宅を「アパート」と呼びますが、韓国では「マンション」と呼び、逆に比較的規模の大きい集合住宅を日本では「マンション」というものを、こちら韓国では「アパート」と呼ぶそうです。言葉がまったく違うと思いきや、日本でも韓国でも通じる単語があったり、隣国ならではの面白さを感じました。日本では当たり前のことが、そうでなかったり、それぞれの文化や生活スタイルの共通点や違いを実感することが出来た、視察初日となりました。
次回の韓国後編は、ソウルを中心にお伝えします。お楽しみに!
Text and photo by Takuma Kagii
海外視察2011_ドイツレポート / 2011.10.11
海外視察2011_ドイツレポート第二回ケルン、デュッセルドルフ、フランクフルト、シュトゥットガルト、ミュンヘン 2011.03.27-04.01
前回に引き続きドイツ視察レポートを入江よりお伝えします。
ICEでケルンへ到着。着いたのが夜だったので天井がライトアップされたケルン駅、駅前に堂々とあるケルン大聖堂と街が綺麗に演出されていたのが印象的でした。
ケルンは歴史ある街並みが多いという印象を持っていましたが、ライン川沿いには新しいオフィスや住宅等を含んだ一帯の開発が進んでいて、ベルリンと同じように建築ラッシュとなっていました。
街としては新旧が重なっていて興味深く、特に川沿いは公園も整備されていて落ち着いた様子でした。
このような街が生まれた背景には、一時期、ケルン大聖堂が周辺の高層建築物計画による景観破壊にさらされ、危機遺産となりましたが、大聖堂の周囲に高さ規制を敷くなど市の努力により解除され、新旧の建物が上手く共存する街となった経緯があります。
私が見学に行った聖コロンバ美術館も、その街にあることを象徴するかのように、既存の壁面に薄いレンガを積層させて内部に光を取り込む壁面を増築し、街並みに緩やかに溶け込んでいました。
内部は様々なシークエンスを楽しむことが出来るようになって、上階の展示空間にはキリスト教の展示品がシンプルな空間に魅力的に展示され、所々に大きい開口窓が設けられ、ケルンの街並みも一つの展示物のように見せる工夫をしていました。
翌日はルール工業地帯の中心都市であるデュッセルドルフへと向かいました。この街では、ランゲン美術館、インゼル・ホムブロイッヒ美術館、メディアハーフェンを見に行きました。
ランゲン美術館までは、デュッセルドルフの駅からバス等を乗り継いで行きました。周辺に着くまでは田園風景が続き建物は何もなく、近くに到着すると建築家安藤忠雄氏の建築デザインらしい、RCの壁面が見えてきて、桜の木が建ち並ぶアプローチによってエントランスへと導かれました。訪れた時期がちょうど花が満開で、日本的で美しい風景となっていました。
ここまでやってくると、デュッセルドルフの駅前の雰囲気とは違い、都会の喧騒を忘れてしまうくらい、自然の美しい田園風景が広がっていて旅の疲れを癒してくれました。美術館も周辺の美しい風景を見せる空間構成となっていて、細長い展示空間を一筆描きでぐるりと回ることが出来ます。
また、ランゲン美術館から田舎の散歩道を歩いて15分くらいのところにインゼル・ホムブロイッヒ美術館があります。この施設は、広大な敷地内に点在する展示品を見ながら森の中を歩くという構成となっています。彫刻家エルヴィン・ヘーリッヒによるアート作品は自然の中に点在していて、あたかもそこにあったかのように自然に溶け込んでいました。展示品がない建物があったり、細長い空間に展示品がランダムに置かれていたりと、今まで見てきた美術館とは異なり、アート作品だけでなく、その周辺の環境までがアート空間となっているようで、時間を忘れてしまうほど入り込んでしまいます。時間の関係で長くは居られなかったのですが、旅の疲れが吹っ飛ぶ居心地が良い場所でした。
その後はメディアハーフェンへオフィス建築を見学に行きました。東京でいう天王洲アイルのような場所で、コの字に水辺を囲んでオフィスやホテルが立ち並んでいます。ここではあまり日本で見られないオフィスのファサードの様子を見ることが出来、現在自分が担当しているオフィス建築の参考になりそうなものが数多く見られました。カラフルなフィルムを施していたオフィスビルでは、規則性がありながらも自由な位置にフィルムを設えていて、中から見るとどんな感じなのか興味深いものがありました。
しかしガラスにフィルム設えて熱の当たり方が一様でない場合、熱割れを起こす可能性がありますが、この物件は問題ないのかが気に掛かるところです。

フランクフルトでは街の特徴である高層ビルが立ち並んでいるオフィス街を見に行きました。様々なオフィスがデザインや高さを求めて競い合っているような感じはニューヨークにいるような感覚を覚えました。
オフィスワーカーと同じ目線で見てみようと思い、朝早く出発して彼らの出勤時間に見学してみました。エントランスから受付を通り、セキュリティゲートを抜けていく一連の流れを見ながら、オフィスのエントランスロビーや食堂の様子を見てきました。オフィスワーカーのために、敷地内のテラスや日当たりの良い場所に食堂を設けてリフレッシュする空間作りがされていました。
オフィスエントランスにはアートや照明等による演出が施されていました。ドイツ銀行のビルではスチールで作られた球体のアートが2階のブリッジを包んでいて、会社のシンボル的な役割を果たしています。建物の見た目で設計するだけでなく、ユーザーの視点に立った建築の作り方について改めて学ぶことが出来ました。
シュトゥットガルトではメルセデスベンツミュージアム、ポルシェミュージアムを見学しました。
メルセデスミュージアムはエレベーターで最上階まで上がり、ニューヨークにあるライトのグッケンハイムミュージアムのような二重の螺旋状の展示空間を降りていく構成となっていて、「自動車の歴史」の動線と「メルセデスベンツの会社としての歴史」の動線の2つがあり、それが視線的にも空間的にも交錯するようになっていて、時代をさかのぼって見学していくとともに、その当時の時代背景と密着して車が変化していく様子が良く分かりました。
展示からは世界最古の自動車メーカーらしく、時代を生き抜いてきた様子も伺えました。
また、メルセデスベンツミュージアムの目の前にはサッカー日本代表の岡崎選手が所属するクラブチームのグラウンドがあります。展望スペースから、異国の地ドイツで頑張る岡崎選手にエールを送りたい気持ちになりました。
最後になりますが、実は、レポートでは紹介しきれない訪れた場所や建築がまだまだ沢山あります。
短い期間でしたが、ドイツの現代オフィス、商業、ミュージアム建築をたっぷりと味わってきた今回の視察で一番強く感じた事は、日本のオフィス、商業、ミュージアムと比べて、その空間を利用する人々にとってデザイン的にも機能的にも細やかな配慮がなされているという事でした。
良く言われるように、ドイツの人々が日本の人々と同様に、繊細で真面目な気質だからなのかもしれませんが、こうした細やかな配慮はとても心地よく、今後、建築を作る上での自分のスタンスに沢山の良い変化をもたらす視察となりました。以上、少し時間の空いた更新になってしまいましたが、スタッフ入江のドイツレポートは終了します。
Text and photo by Shigeki Irie
海外視察2011_ドイツレポート / 2011.07.06
海外視察2011_ドイツレポート第一回ベルリン、デッサウ、ヴォルフスブルク 2011.03.23 - 03.26
第五回目の海外視察レポートは、スタッフ入江よりお伝えします。
2011年春、オフィス、商業、ミュージアムを主体にドイツの近代建築を視察に行きました。ドイツの街や建築を肌で感じるため陸路で移動し、ベルリンからスタートして、デッサウ~ヴォルフスブルク~ケルン~デュッセルドルフ~フランクフルト~シュトゥットガルト~ミュンヘンの順で視察しました。
学生の頃にバックパックで行ったドイツとは印象が変わり、環境に対して配慮した建築物や、数多くの再開発の完成など目に入ってくるものが真新しく、ここ数年でめざましい進化を続けている、活き活きとした街の力強さを感じました。結果的に、ドイツのガラスの建築技術やサスティナブル建築等について数多くの体験を得た旅となりました。8日間の視察を前編、後編の2回に分けてレポートしていきます。
最初に訪れたのはベルリン。ここは1989年の東西統一後に目覚ましく発展した街ですが、自分が学生時代に訪れた時
と比べて、さらに発展と変化を感じることが出来ました。最初に降り立ったベルリン中央駅は、以前訪れた時はまだ完成していませんでした。地下3階・地上3階の大きなガラスのアトリウムの吹抜空間に、東西南北から電車が建築を突き抜けて入ってくる様子は、急速な再開発を象徴するような印象を受けました。ベルリン中央駅前は広大な面積が仮囲いされていて、大きな再開発が進行中であり、2012年6月に完成予定のベルリン・ブランデンブルク国際空港が出来ると、益々ベルリンが首都として輝きそうな予感がします。しかしその一方で、まだ昔ながらの街並みも残っていて、路地空間を縫うように商業施設が賑わっている光景は、ヨーロッパならではの雰囲気を感じ、私の心を温かくさせてくれました。
このベルリンの街では、オフィスに焦点をあて視察をしました。
ドイツのオフィスビルでは外ブラインド、自然換気、ダブルスキンの採用が主流となっています。外壁面をダブルスキンにすることで、デザインの自由度が生まれ、日本でよくある均一的なオフィスビルの外装の印象とは違い、表情豊かなファサードが多い印象を受けました。インテリアも特徴的で、瞳の色が薄い欧米人は、瞳の黒い日本人よりグレアに対して弱いため、低照度の室内が多く、ほとんどが天井の間接照明とタスク照明で賄っていました。外国に比べて高い照度基準に慣れている日本人の私にとっては若干暗い印象を受けました。タスクアンビエント照明は電気使用量をトータルで減らすことが出来るため日本でもこれから需要が増えていくのではないでしょうか。
震災後、節電が求められている今、一層注目を浴びる照明の手法になるのではないかと思いました。
*グレア=光のまぶしさ
*タスクアンビエント照明=タスク・アンビエント照明はTask(作業)and Ambient(周囲)Lighting(照明)の日本語訳です。局部照明と室内全体の照明を合わせて必要な明るさを確保することです。
次なる目的地、デッサウではバウハウスやマイスターハウス、ドイツ環境省を中心に、レンタサイクルを利用して街の中を回りました。ここでは、建築を見に来る人々のためにあるレンタサイクルの事務所で地図を貰い、バウハウスやマイスターハウスへ向かいましたが、自転車のためのサインが適切な場所に用意されていて、街のあちこちにある建築を見て回るのにとても便利でした。また、行く先々で建築の案内人の方々の話を伺ううちに、街を挙げて偉大な建築家の功績を大切に守っている感じが伝わってきました。
ドイツ環境省では外装に木材や面によって異なるカラフルなガラスを使用していて、電車からもその存在がよく分かりました。デザインされたファサードのサイドには目立たないように自然換気を採用していたり、人感センサーで無駄な電気を使用しなかったりと、あらゆる面で省エネルギーを考えられた建築物でした。メインエントランスのアトリウム空間の天井部に太陽光発電を採り付けていて、目に見える環境アピールをしている印象を受けました。
館内で働いていた職員さんに話を聞いてみると、冷房は会議室などでしか使用しないそうで、オフィス内の個室は自然換気のみで賄っていますが、快適で使いやすい建築だと言っていました。建築の話について聞いたところ、快く図面をコピーしてくれて、本当に良い出会いとなりました。
その後、ベルリンからドイツの新幹線"ICE"に乗って約一時間。ヴォルフスブルクに向かい、駅前にある「フェーノ科学博物館」とフォルクスワーゲンのテーマパーク「アウトシュタット」を見学しました。フェーノとアウトシュタットは駅を挟んでペデストリアンデッキで繋がれていて、大変にアクセスが良く、まずはフェーノに行きました。建築自体は、脱構築主義で有名な建築家ザハ・ハディドがデザインしたものです。斜めに開く自動扉を抜け受付をし、エスカレーターで2階の展示空間へ行く動線となっていました。2階に上がると子供達が走り回っていて、様々な科学の体験型アトラクションで賑わっています。この空間に身を置くと自分もわくわくして体が自然と動き出していました。緩やかなスロープで有機的に空間が繋がれて、単調でないのも童心に帰らせる魅力の1つかもしれません。
時間を忘れて楽しんで回った後、次の目的であるアウトシュタットに向かいました。こちらは広大な土地に落ち着いた空間の体験型テーマパークで、フォルクスワーゲンを買う人のため空間づくりをしていました。車を購入した人がアウトシュタットで車を引き取れるサービスも人気の1つのようで、800台納車可能な円柱状のガラスのタワーはこのテーマパークのシンボルとなっていました。微笑ましくかつ感心させられたのは、子供の為に車の形をしたカウンターステップ。子供への配慮も、そして車のコマーシャルも忘れていません。
アウトシュタットから駅への帰り道に公園があったのですが、タイヤの遊具があり、フォルクスワーゲンで発展して来た街である印象を受けました。帰りにもう一度フェーノに寄り昼ご飯を食べ、ヴォルフスブルク駅に戻り、ICEにてドルトムンド経由でケルンへと向かいました。次回は、ケルン、デュッセルドルフ、フランクフルト、シュトゥットガルト、ミュンヘンのレポートをお送りします。お楽しみに!
Text and photo by Shigeki Irie
海外視察2010_パリ・ロンドンレポート / 2011.05.09
海外視察2010_パリ・ロンドンレポート第二回ロンドン_2010.09.01 - 09.04
前回のパリに引き続き、スタッフの緖方より今回はロンドンの水辺をレポートします。
パリ・ロンドンレポートの最終回となります。
ロンドン、テムズ川も、セーヌ川同様、数多くの観光名所をその河岸に有しています。ビッグベン、ロンドンアイ、タワーブリッジ、、、名所を背景にした雄大な水辺の景色は歩くだけで楽しい空間です。そのテムズ川の景観を最大限に活かす河岸の賑わう空間が随所にみられます。
断面的に水面に近いところに遊歩道が整備されているセーヌ川と違って、テムズ川は水面と河岸との高低差が大きく、河岸の広さがセーヌ川よりも大きく感じられました。また、車道が河岸に近接しておらず、公園や広場で豊かなバッファーゾーンが多く設けられて、より歩行者に開かれているように感じました。
遊歩道が水面に近く、より近くで水辺を楽しむことができるパリ、水面から高いところにあるけれど、車道が切り離され豊かな水辺空間が広がるロンドン。両都市それぞれの水辺へのアプローチを違いを認識したような気がします。(歩いた場所が特にそういった特徴を持っていただけかもしれませんが、、、)
テムズ川以外にも、ロンドンにはドック跡地の開発が多くあります。テムズ川沿岸にあるウォーターフロント再開発ドックランズのうち、セントキャサリンドックとカナリーワーフに足を運びました。そこにはテムズ川とは違った、ドック跡地のスケール感ならではの水辺空間が広がっていました。
水辺という価値や魅力を更に増すべく、開発が進むロンドンのドックランズ。そこには豊かな景観があり、そこに集う人々を見ることができました。足を運んだ2つのドック跡地開発地には、働いている人も住んでいる人も来訪している人もいて、そういった多様性が豊かな空間を生んでいるように思えました。
パリ・ロンドン、両都市の水辺空間を見て回った7日間。1つの着目点を持って都市を歩くと、観光とは違った都市像が浮かび上がってきます。その1点に限ってはより深く肌で感じることができました。
海、川、湖、、、多くの水辺空間を有する日本。その資産を日本は活かし切れているだろうか?水辺空間はもっとアクティブであってよいのではないか?気づいていないことが多くあるのではないか?そう感じずにはいられない7日間でした。
――― そして、2011.03.11の震災。
水から都市を守ることは、水に対して閉じることで解決できるのか、、、考える時です。
以上、スタッフ緒方のパリ・ロンドンレポートでした!
Text and photo by Hirohisa Ogata