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海外視察
スペイン/空港事情と街並み

今回のレポートは、スタッフ田部よりお送りします。

今回の視察では、羽田空港プロジェクトのチームスタッフと共に、スペインの各都市を回ってきました。マドリードから入って、コルドバ→グラナダ→マラガ→バレンシア→バルセロナとスペインを一周するというかなり弾丸でしたが、いろいろな街へ訪れることができ、実りあるツアーでした。そして、スペインの空港は来る人をもてなし、楽しませる工夫がたくさんあり、日本の空港づくりにも役立つことをたくさん得ることができました。

空港プロジェクトに関する視察ということもあり、まずは空港のこと、そしてスペインの街並みについてご報告させていただきたいと思います。空港はその国その都市で、まずはじめに出会う空間であり、旅立つ人にはこれからの高揚感を高めてくれたり、帰ってくる人を優しく迎えてくれます。特に国際線のチェックインロビーは大空間であることが多く、大きなスケールと、意匠・構造・設備が美しく融合している空港は、着いた瞬間から胸が高鳴ります。個人的にも空港の建築は大好きですし、キャリーバックを持ってこれから旅立つ人を見ているだけでも楽しめます。

アドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港 ターミナル4

2005年に竣工したアドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港(以下、マドリード=バラハス空港)へ行きました。設計したのはリチャード・ロジャース。10年以上前に建てられたとは思えない、デザイン的にも優れた空間でした。
通常は、都市が発達し、発着便が増えると既存施設では対応できなくなるため、空港は増築します。バラハス・アドルフォ・スアレス空港 ターミナル4は一つのユニットを繰り返すデザインとしており、将来訪れる増築時にも、意匠・構造・設備のデザインを継承しやすいように工夫されています。

  • 1ユニットのモデル(Richard George Rogersのホームページより引用)

その圧倒的な力強さ、繊細さ、システマチックさには圧巻でした。通常デザインする上で課題となる、天井に付く消防設備やスピーカーなどはどこに隠されているのかわからないほど、シンプルですっきりとした天井が連続しています。複雑な三次曲線の天井ですが、天井材をルーバーとすることで、見事に解決しています。同じユニットの繰り返しの空間ではありますが、場所によって差異があります。
屋根の一番高い位置にある円形にデザインされたものは、チェックインロビーでは機能的に明るい必要があるため、照明をレフ板にあてて、空間全体を照らしています。一方、手荷物受取場の天井はトップライトになっており、到着した人がマドリードの外の光を感じる事ができるようになっています。

  • 荷物受け取場の天井は、レフ板によって空間全体を照らしています

  • 天井がトップライトになっているユニット1(手荷物受取場)

  • 天井がトップライトになっているユニット2(手荷物受取場)

また、カーブサイド(車寄せ)とチェックインカウンターもシームレスに繋がります。カーブサイドも同じ構成の中で、微妙に機能を変えています。カーブサイドの天井はルーバーなしのトップライトとなっており、よりダイレクトに外の光を感じることが出来ます。私たちは、空港を見るためにタクシーでここを訪れましたが、タクシーでカーブサイドへ入るところから、この空港の特徴であるデザインの力が感じられます。

  • 内部のユニットと同じユニットが繰り返されているカーブサイド

  • 内外がシームレスにつながります

リチャード・ロジャースはもともとハイテック志向・工業志向の建築家ですが、その精神は構造だけでなく、随所に徹底したデザインが見受けられます。

  • チェックインロビーの端部。柱梁の構成が独立していて、太い構造も軽やかに見えます

  • 四隅のエッジがかわいいエレベーター

  • メカニックな構造だがスッキリした印象のFIS (Flight Information System)

サインが取り付けられる下地も、通常は隠す構造体を見せることによって、細くてスッキリしたデザインが実現しています。

  • 構造体が丸見えだけどスッキリしたデザイン!

照明もほぼ全て同じものを使用しています。それによってターミナル全体に統一感があります。

  • 到着ゲート

  • トイレの入口も近代的

今回、到着したのが、ターミナル1であったため、残念ながらチェックインロビーなどの一般区域内しか見る事ができませんでした。次回はぜひターミナル4を利用し、保安区域内も見てみたいです。

バルセロナ エル・プラット国際空港

次に向かったのは、スペインの建築家リカルド・ボフィルによって2009年に建てられたバルセロナ・エル・プラット国際空港です。とても広々として解放感のある空港でした。

  • のびやかなチェックインロビー

  • 保安区域内でも、街の様に感じる免税店

保安区域内の免税店も大きな屋根の下に独立して建っており、一つの街みたいでした。通路もまるで、街中の路地のようでした。
ここでは時間に余裕があったため、ラウンジを利用する事にしました。

  • 海外のラウンジ初体験!

  • 充分に引きのあるラウンジの受付

ここの空港のラウンジはビジネスクラスやエアラインのカードを持っていなくてもお金を払えば入る事ができます。
まず、座席配置に注目しました。通常、座席が向かい合っていると他人と向かい合う事が気まずかったりするのですが、これだけゆったりと空間がとられていると、あまり気になりません。ソファとソファの距離が長いのだけでなく、ソファ自体の幅が広いことも、理由の一つかと思います。

  • 広々しているのはチェックインロビーだけでなく、ラウンジもでした

  • 実際に他人同士が向かい合って座っています

また、他にも子供が遊べるスペースが設けられているなど様々な用途の空間が用意されています。ラウンジ自体のスペースが広いため、ゆっくりと過ごしたい人は離れた位置を選んで座れば、子供が遊ぶ音や声は気になりません。

  • ラウンジ内の子供のためのスペース

ラウンジのソファだけで十分仮眠できそうな立派なソファですが、実は仮眠室も整備されています。仮眠室には鍵のかけられるロッカーがありました。ホスピタリティがすごいです!
また、写真のようなフードカウンターが4か所あり、それぞれ違ったフードが置いてあります。私は、ハムとチーズとレモンビールをいただきました。

  • 仮眠室も完備

  • フードも充実!

  • フードカウンターでいただいた軽食とレモンビール

  • 雑誌コーナー。矢印が飛行機になっているところがかわいい

スタディコーナーは、他のラウンジのソファ席からきちんと距離を取って設置されていました。ここなら集中して仕事や作業ができそうです。

  • スタディコーナー

シャワーブースは洗面室もシャワー室も同じ床石を使用していました。水廻りの床材を石にすることで上・下足兼用としても気持ち悪さを感じませんでした。利用する人が靴を好きな場所で脱げるので、使いやすかったです。

  • シャワーブース

それからラウンジを出て、中庭へ来てみました。保安検査場を通ってから外部空間へ出ることができる空港は初めてでした。最後にバロセロナの空気を感じる事が出来て気持ち良かったです。

  • 中庭にはアイスクリーム屋さんがありました

マドリードの街並み

続いてはスペインの街並みについてレポートします。マドリードはスペインの首都であるため近代的な建物がたくさんあると思っていましたが、実際は大きな美術館があったり、宮殿があったり、古く趣のある建物が多く、歩いていて楽しい街でした。

  • スペイン広場

  • カイシャフォーラム(ヘルツオーク&ドムーロン)

  • サン・ミゲル市場(Mercado de San Miguel)

  • 使わなくなったプラットホームを植物園にしたアトーチャー駅

  • マドリード王宮

  • マドリードの街並み

外観は古いのに、中に入ったらハイテクな空間というのもとっても面白かったです。その一つの例として、PRIMARKという、アイルランド発のファストファッションを取り扱っているビルへ入りました。(日本で知られているH&Mと同じくらいの価格帯)もともと、1924年に8階のフロアーから成る「マドリード・パリ百貨店」でした。ヨーロッパの百貨店によく見られる、大きな吹き抜け空間を生かし、改修後は透過型LEDビジョンによる、空間演出を行っています。LED一粒一粒を取り付けられた軽量鉄骨は極細なので、演出が行われていない時は遠くからだと、透けてそこに何もないように見えます。

しかし演出が始まると、プロジェクションマッピングのように、何も見えなかったところからいきなり映像が現れるので、かなりのインパクトと驚きがあります。
こちらが、空間演出の様子の動画↓