Jun Mitsui & Associates Inc. Architects|Pelli Clarke Pelli Architects Japan, Inc.

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Staff report25/04/2011


海外視察2011 韓国レポート 第一回

仁川(インチョン)_2011.10.03 - 10.04
これまでヨーロッパ圏のレポートが続きましたが、今回の海外視察レポートはスタッフ鍵井が韓国をレポートします。
2011年秋、アジア諸国の大規模な複合都市開発を学ぶ視察を目的として、韓国の仁川市(インチョン)を訪れました。韓流ドラマやK-POPなど、日本ではすっかり韓国のエンターテーメント文化が広まり、認知されていますが、街づくりの取り組みはどのようなものなのでしょうか?短い滞在時間ではありましたが、自分なりの目線でレポートしようと思います。

韓国は国策により、2002年に経済自由区域法が制定され、翌年には経済自由区が指定されました。外資及び外国企業を誘致するため、様々な優遇制度を設けるなか、街をつくるためのマスタープランをもとに大規模な都市開発が進んでいるところです。今回はそのひとつの仁川市内にある、松島(ソンド)地区、永宗(ヨンジョン)地区、青蘿(チョンラ)地区からなる、IFEZ(=Incheon Free Economic Zone)を中心に、韓国における最新の街づくりと住宅事情についてお届けいたします。

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訪れた都市、仁川は日本から約2時間半。東京‐大阪間を移動するのとほぼ同じ時間で行くことのできる、本当に近いところです。仁川国際空港の開港と共に、ソウル、プサンに続く韓国第3の都市として浮上した湾岸エリアの街仁川は、既存の市街地が広がるなかで、新たな都市開発が各地で進み、変化を遂げようとする勢いを感じました。

まず訪れたのは松島(ソンド)地区。ここには、国際業務の中心であるトレードセンターをはじめコンベンションセンター、知識基盤産業を目的とした先端バイオ団地やITクラスター等が計画されているところであり、最大5万トン級のクルーズ船1隻が接岸できるクルーズ専用埠頭を含む国際旅客ターミナルも建設中です。また、高さ600mの仁川タワーの計画も進んでいて、将来的には53.4k㎡の土地にこれらの施設と公園が整備される現在進行中の国内都市開発において最も特徴あるところです。

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この他にも、居住外国人のために国内最高水準の医療サービスが受けられる仁川国際病院や、優れた人材を育成するための教育施設等が計画されているそうです。韓国の伝統的住居配置を現代風に解釈したタワーが建っていたり、海外のデザイナーならではの視点で韓国を読み解き、デザインに対するアプローチはとても参考になりました。 まだ開発の途中段階ということもあり、街全体が少し閑散としているなか、そそり立つ超高層のタワーのスケールが妙に気になり違和感を覚えながら歩いていました。おそらく、人の賑わいを感じる施設や場所がまだまだ少なかったこともあるのでしょうが、超高層のボリュームに対しての低層部の設えが若干スケールアウトしていたように思いました。更に、幅員の広い道路が各ブロックを分断している感じを強く受けました。マスタープランを見る限りでは、業務、商業、住居等のエリアがバランス良く配置され、それぞれが緑や水でつながり、豊かな外部空間がつくられているはずなのに・・・。これからの使われ方と賑わいに期待です!
そして、松島地区で最後に訪れたのは「キャナルウォーク」という名前のついた複合施設です。中央に水景がありその両側に1・2階にはカフェやショップが並び、上階はオフィスという構成です。低層に抑えられた建物のボリュームと分節された壁面、石や木を使った素材感のあるファサード。少し歩くと広場があったり、その広場から路地が続き、自然にお店に入れたりと、先ほどとは違って、歩いていて楽しい空間でした。こういった大規模な開発においても、ヒューマンスケールを大切にした、居心地の良い場所をつくることが、改めて大切だと実感しました。

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次に訪れたのは、京畿道(キョンギド)の板橋(パンギョ)新都市へ。こちらの地区には各棟異なった外国人建築家がデザインを手掛けた低層の集合住宅があります。緩やかな丘陵地の敷地には、異なるデザインの集合住宅が提案されています。テラスハウス型やコートハウス型、眺望を確保しつつプライバシーを守ったものなど、デザイナーの個性を感じる住宅群でした。自分が住んでみたいなぁと思った棟が、案内していただいた方に聞くと、入居率が低いとのこと。韓国の方には、少しオープンすぎて、プライバシーが気になるみたいです。我々も、外国人デザイナーとして海外物件、特に住宅をやる時はその国の文化や生活を知ることがデザインを行う上で重要だと考えさせられました。

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板橋(パンギョ)を離れ、タワー型の住宅視察のためドンタンへ。その途中に、ブンダンのカフェストリートに立寄りました。ここは、約400mにも続く並木通り沿いにカフェや飲食店が立ち並ぶ地元の方に人気のスポット。当初は空地(?)(歩道の幅が広かった)だった店舗前に、何件のお店がイスやテーブルを出し、そのうちテラスをつくったり、屋根や囲いをつけたりとエスカレートしてゆき今のようなかたちになったらしいです。テラスがあることによって店の賑わいが通りにも滲み出てきているし、みんながやることで連続感が生まれ、非常に雰囲気の良い街並みがつくられているように思えました。行政側もこの件に関しては認めたらしく、話題となり多くの人が訪れる場所になっています。

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寄り道の後で、いよいよサムスンの分譲したレミアンアパートに到着しました。韓国では珍しいテラコッタを用いた外装が特徴的な高層住宅。敷地の高低差をうまく利用したランドスケープの計画が、高層住宅の足元を豊かな空間にしており、子供の遊び場や散歩道など、住民にとっての憩いの場所になっていました。タワーを見上げると・・・写真を見てもう気づいている方もいるかもしれませんが、バルコニーがない!!そういえばここまで来る途中に見た高層の集合住宅にもほとんどバルコニーがないのです。実は、韓国ではこれが一般的で、バルコニーはあるのですが窓で覆うと、居室と同等に利用できるため、既存のマンションでは居住スペースの拡張のために行われたのが始まりだそうです。新築物件でも、あるルールの下バルコニーゾーンを設定すれば、バルコニー同様容積率に算入されないといった法律が存在するのです。販売用パンフレットにも、このバルコニーゾーンが記載されているのですが、部屋として分譲してしまうそうです。このため、オフィスビルのような外観をした高層住宅が多いのも特徴的なところです。

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また日本では小規模の集合住宅を「アパート」と呼びますが、韓国では「マンション」と呼び、逆に比較的規模の大きい集合住宅を日本では「マンション」というものを、こちら韓国では「アパート」と呼ぶそうです。言葉がまったく違うと思いきや、日本でも韓国でも通じる単語があったり、隣国ならではの面白さを感じました。日本では当たり前のことが、そうでなかったり、それぞれの文化や生活スタイルの共通点や違いを実感することが出来た、視察初日となりました。

次回の韓国後編は、ソウルを中心にお伝えします。お楽しみに!

Text and photo by Takuma Kagii