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海外視察2011 ドイツレポート 第二回

ケルン、デュッセルドルフ、フランクフルト、シュトゥットガルト、ミュンヘン 2011.03.27-04.01
前回に引き続きドイツ視察レポートを入江よりお伝えします。

ICEでケルンへ到着。着いたのが夜だったので天井がライトアップされたケルン駅、駅前に堂々とあるケルン大聖堂と街が綺麗に演出されていたのが印象的でした。

ケルンは歴史ある街並みが多いという印象を持っていましたが、ライン川沿いには新しいオフィスや住宅等を含んだ一帯の開発が進んでいて、ベルリンと同じように建築ラッシュとなっていました。 街としては新旧が重なっていて興味深く、特に川沿いは公園も整備されていて落ち着いた様子でした。 このような街が生まれた背景には、一時期、ケルン大聖堂が周辺の高層建築物計画による景観破壊にさらされ、危機遺産となりましたが、大聖堂の周囲に高さ規制を敷くなど市の努力により解除され、新旧の建物が上手く共存する街となった経緯があります。

私が見学に行った聖コロンバ美術館も、その街にあることを象徴するかのように、既存の壁面に薄いレンガを積層させて内部に光を取り込む壁面を増築し、街並みに緩やかに溶け込んでいました。 内部は様々なシークエンスを楽しむことが出来るようになって、上階の展示空間にはキリスト教の展示品がシンプルな空間に魅力的に展示され、所々に大きい開口窓が設けられ、ケルンの街並みも一つの展示物のように見せる工夫をしていました。

翌日はルール工業地帯の中心都市であるデュッセルドルフへと向かいました。この街では、ランゲン美術館、インゼル・ホムブロイッヒ美術館、メディアハーフェンを見に行きました。 ランゲン美術館までは、デュッセルドルフの駅からバス等を乗り継いで行きました。周辺に着くまでは田園風景が続き建物は何もなく、近くに到着すると建築家安藤忠雄氏の建築デザインらしい、RCの壁面が見えてきて、桜の木が建ち並ぶアプローチによってエントランスへと導かれました。訪れた時期がちょうど花が満開で、日本的で美しい風景となっていました。 ここまでやってくると、デュッセルドルフの駅前の雰囲気とは違い、都会の喧騒を忘れてしまうくらい、自然の美しい田園風景が広がっていて旅の疲れを癒してくれました。美術館も周辺の美しい風景を見せる空間構成となっていて、細長い展示空間を一筆描きでぐるりと回ることが出来ます。

また、ランゲン美術館から田舎の散歩道を歩いて15分くらいのところにインゼル・ホムブロイッヒ美術館があります。この施設は、広大な敷地内に点在する展示品を見ながら森の中を歩くという構成となっています。彫刻家エルヴィン・ヘーリッヒによるアート作品は自然の中に点在していて、あたかもそこにあったかのように自然に溶け込んでいました。展示品がない建物があったり、細長い空間に展示品がランダムに置かれていたりと、今まで見てきた美術館とは異なり、アート作品だけでなく、その周辺の環境までがアート空間となっているようで、時間を忘れてしまうほど入り込んでしまいます。時間の関係で長くは居られなかったのですが、旅の疲れが吹っ飛ぶ居心地が良い場所でした。

その後はメディアハーフェンへオフィス建築を見学に行きました。東京でいう天王洲アイルのような場所で、コの字に水辺を囲んでオフィスやホテルが立ち並んでいます。ここではあまり日本で見られないオフィスのファサードの様子を見ることが出来、現在自分が担当しているオフィス建築の参考になりそうなものが数多く見られました。カラフルなフィルムを施していたオフィスビルでは、規則性がありながらも自由な位置にフィルムを設えていて、中から見るとどんな感じなのか興味深いものがありました。 しかしガラスにフィルム設えて熱の当たり方が一様でない場合、熱割れを起こす可能性がありますが、この物件は問題ないのかが気に掛かるところです。

フランクフルトでは街の特徴である高層ビルが立ち並んでいるオフィス街を見に行きました。様々なオフィスがデザインや高さを求めて競い合っているような感じはニューヨークにいるような感覚を覚えました。 オフィスワーカーと同じ目線で見てみようと思い、朝早く出発して彼らの出勤時間に見学してみました。エントランスから受付を通り、セキュリティゲートを抜けていく一連の流れを見ながら、オフィスのエントランスロビーや食堂の様子を見てきました。オフィスワーカーのために、敷地内のテラスや日当たりの良い場所に食堂を設けてリフレッシュする空間作りがされていました。

オフィスエントランスにはアートや照明等による演出が施されていました。ドイツ銀行のビルではスチールで作られた球体のアートが2階のブリッジを包んでいて、会社のシンボル的な役割を果たしています。建物の見た目で設計するだけでなく、ユーザーの視点に立った建築の作り方について改めて学ぶことが出来ました。

シュトゥットガルトではメルセデスベンツミュージアム、ポルシェミュージアムを見学しました。 メルセデスミュージアムはエレベーターで最上階まで上がり、ニューヨークにあるライトのグッケンハイムミュージアムのような二重の螺旋状の展示空間を降りていく構成となっていて、「自動車の歴史」の動線と「メルセデスベンツの会社としての歴史」の動線の2つがあり、それが視線的にも空間的にも交錯するようになっていて、時代をさかのぼって見学していくとともに、その当時の時代背景と密着して車が変化していく様子が良く分かりました。 展示からは世界最古の自動車メーカーらしく、時代を生き抜いてきた様子も伺えました。

また、メルセデスベンツミュージアムの目の前にはサッカー日本代表の岡崎選手が所属するクラブチームのグラウンドがあります。展望スペースから、異国の地ドイツで頑張る岡崎選手にエールを送りたい気持ちになりました。

最後になりますが、実は、レポートでは紹介しきれない訪れた場所や建築がまだまだ沢山あります。 短い期間でしたが、ドイツの現代オフィス、商業、ミュージアム建築をたっぷりと味わってきた今回の視察で一番強く感じた事は、日本のオフィス、商業、ミュージアムと比べて、その空間を利用する人々にとってデザイン的にも機能的にも細やかな配慮がなされているという事でした。
良く言われるように、ドイツの人々が日本の人々と同様に、繊細で真面目な気質だからなのかもしれませんが、こうした細やかな配慮はとても心地よく、今後、建築を作る上での自分のスタンスに沢山の良い変化をもたらす視察となりました。以上、少し時間の空いた更新になってしまいましたが、スタッフ入江のドイツレポートは終了します。

Text and photo by Shigeki Irie

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