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海外視察2011 ドイツレポート 第一回

ベルリン、デッサウ、ヴォルフスブルク 2011.03.23 – 03.26

第五回目の海外視察レポートは、スタッフ入江よりお伝えします。

 

2011年春、オフィス、商業、ミュージアムを主体にドイツの近代建築を視察に行きました。ドイツの街や建築を肌で感じるため陸路で移動し、ベルリンからスタートして、デッサウ~ヴォルフスブルク~ケルン~デュッセルドルフ~フランクフルト~シュトゥットガルト~ミュンヘンの順で視察しました。

学生の頃にバックパックで行ったドイツとは印象が変わり、環境に対して配慮した建築物や、数多くの再開発の完成など目に入ってくるものが真新しく、ここ数年でめざましい進化を続けている、活き活きとした街の力強さを感じました。結果的に、ドイツのガラスの建築技術やサスティナブル建築等について数多くの体験を得た旅となりました。8日間の視察を前編、後編の2回に分けてレポートしていきます。
最初に訪れたのはベルリン。ここは1989年の東西統一後に目覚ましく発展した街ですが、自分が学生時代に訪れた時 と比べて、さらに発展と変化を感じることが出来ました。最初に降り立ったベルリン中央駅は、以前訪れた時はまだ完成していませんでした。地下3階・地上3階の大きなガラスのアトリウムの吹抜空間に、東西南北から電車が建築を突き抜けて入ってくる様子は、急速な再開発を象徴するような印象を受けました。ベルリン中央駅前は広大な面積が仮囲いされていて、大きな再開発が進行中であり、2012年6月に完成予定のベルリン・ブランデンブルク国際空港が出来ると、益々ベルリンが首都として輝きそうな予感がします。しかしその一方で、まだ昔ながらの街並みも残っていて、路地空間を縫うように商業施設が賑わっている光景は、ヨーロッパならではの雰囲気を感じ、私の心を温かくさせてくれました。

このベルリンの街では、オフィスに焦点をあて視察をしました。 ドイツのオフィスビルでは外ブラインド、自然換気、ダブルスキンの採用が主流となっています。外壁面をダブルスキンにすることで、デザインの自由度が生まれ、日本でよくある均一的なオフィスビルの外装の印象とは違い、表情豊かなファサードが多い印象を受けました。インテリアも特徴的で、瞳の色が薄い欧米人は、瞳の黒い日本人よりグレアに対して弱いため、低照度の室内が多く、ほとんどが天井の間接照明とタスク照明で賄っていました。外国に比べて高い照度基準に慣れている日本人の私にとっては若干暗い印象を受けました。タスクアンビエント照明は電気使用量をトータルで減らすことが出来るため日本でもこれから需要が増えていくのではないでしょうか。 震災後、節電が求められている今、一層注目を浴びる照明の手法になるのではないかと思いました。

*グレア=光のまぶしさ
*タスクアンビエント照明=タスク・アンビエント照明はTask(作業)and Ambient(周囲)Lighting(照明)の日本語訳です。局部照明と室内全体の照明を合わせて必要な明るさを確保することです。

次なる目的地、デッサウではバウハウスやマイスターハウス、ドイツ環境省を中心に、レンタサイクルを利用して街の中を回りました。ここでは、建築を見に来る人々のためにあるレンタサイクルの事務所で地図を貰い、バウハウスやマイスターハウスへ向かいましたが、自転車のためのサインが適切な場所に用意されていて、街のあちこちにある建築を見て回るのにとても便利でした。また、行く先々で建築の案内人の方々の話を伺ううちに、街を挙げて偉大な建築家の功績を大切に守っている感じが伝わってきました。

ドイツ環境省では外装に木材や面によって異なるカラフルなガラスを使用していて、電車からもその存在がよく分かりました。デザインされたファサードのサイドには目立たないように自然換気を採用していたり、人感センサーで無駄な電気を使用しなかったりと、あらゆる面で省エネルギーを考えられた建築物でした。メインエントランスのアトリウム空間の天井部に太陽光発電を採り付けていて、目に見える環境アピールをしている印象を受けました。

館内で働いていた職員さんに話を聞いてみると、冷房は会議室などでしか使用しないそうで、オフィス内の個室は自然換気のみで賄っていますが、快適で使いやすい建築だと言っていました。建築の話について聞いたところ、快く図面をコピーしてくれて、本当に良い出会いとなりました。
その後、ベルリンからドイツの新幹線”ICE”に乗って約一時間。ヴォルフスブルクに向かい、駅前にある「フェーノ科学博物館」とフォルクスワーゲンのテーマパーク「アウトシュタット」を見学しました。フェーノとアウトシュタットは駅を挟んでペデストリアンデッキで繋がれていて、大変にアクセスが良く、まずはフェーノに行きました。建築自体は、脱構築主義で有名な建築家ザハ・ハディドがデザインしたものです。斜めに開く自動扉を抜け受付をし、エスカレーターで2階の展示空間へ行く動線となっていました。2階に上がると子供達が走り回っていて、様々な科学の体験型アトラクションで賑わっています。この空間に身を置くと自分もわくわくして体が自然と動き出していました。緩やかなスロープで有機的に空間が繋がれて、単調でないのも童心に帰らせる魅力の1つかもしれません。

時間を忘れて楽しんで回った後、次の目的であるアウトシュタットに向かいました。こちらは広大な土地に落ち着いた空間の体験型テーマパークで、フォルクスワーゲンを買う人のため空間づくりをしていました。車を購入した人がアウトシュタットで車を引き取れるサービスも人気の1つのようで、800台納車可能な円柱状のガラスのタワーはこのテーマパークのシンボルとなっていました。微笑ましくかつ感心させられたのは、子供の為に車の形をしたカウンターステップ。子供への配慮も、そして車のコマーシャルも忘れていません。

アウトシュタットから駅への帰り道に公園があったのですが、タイヤの遊具があり、フォルクスワーゲンで発展して来た街である印象を受けました。帰りにもう一度フェーノに寄り昼ご飯を食べ、ヴォルフスブルク駅に戻り、ICEにてドルトムンド経由でケルンへと向かいました。次回は、ケルン、デュッセルドルフ、フランクフルト、シュトゥットガルト、ミュンヘンのレポートをお送りします。お楽しみに!

Text and photo by Shigeki Irie

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