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海外視察 イギリス/オランダ
トランスポーテーションとそのまちづくり 後半+番外編カタール

前半に引き続き、スタッフの田部がお送りします。

オランダの鉄道 ユトレヒト駅/ユトレヒト

オランダでは自転車の利用者が非常に多く、車両歩道の他に自転車専用レーンが存在します。オランダの自転車保有率は1人あたり約1.1台と世界一!自転車とオランダ人は切っても切れない関係性にあります。
そんなオランダの都市ユトレヒトは、オランダの中でも自転車利用率が一位。そのため、自転車置き場が街のいたるところで見られます。ユトレヒトではコンコースの高さを道路より上に設け、道路と同じ高さに自転車置き場を設置することで、スムーズに自転車から電車へとアクセスできます。

  • 手前から歩道、自転車専用レーン、車道、トラム(アムステルダム)

  • 駅へと繋がる大階段の一部を切り抜いた自転車置き場

日本ではここまで完備された自転車置場はなかなかないのではないでしょうか。自転車通勤の私としては羨ましい限りです!
ペデストリアンデッキは、大型のショッピングモールとつながっており、ショッピングモールは、街とつながっております。ユトレヒト駅周辺施設は、現在も工事中で、駅を中心に、今後さらにこの街が発展していくことが期待されています。

  • 1Fと2Fをつなぐスロープ

  • 入場の手続きを行う有人のカウンター

  • 自転車置き場と直結する駅

  • 駅へとつながる自転車置き場の出口

その後、駅構内へ入ってみました。コンコースは細い柱と大屋根によって覆われています。まるで空港のチェックインロビーみたいでした。建築の大空間の架構は旅立ちを予感させる高揚感をもたらしてくれます!

  • ユトレヒト駅コンコース

  • 外部の庇へと繋がる大屋根の意匠

  • コンコースにあった発電できるブランコで遊ぶ人たち

  • 駅のプラットホーム

アーネム駅/アーネム, オランダ

ヨーロッパには坂道が多く、坂道があることで様々な居場所が生まれ、空間が豊かになっているように感じました。日本では、特に駅などの公共施設の斜面を減らし、平場が多く作られるため、とても新鮮でした。
アーネム駅はほぼ斜面で構成されており、傾斜によって生まれるダイナミックさもさることながら、微妙な差も、居心地のよさを作り出しています。デザインはUNスタジオによるものです。

冒頭にも出てきたアーネム駅構内

例えば、オープンに仲間とわいわい過ごせる場所や、天井高が低く、静かに過ごせる所など、様々なシーンが見られ、建築周囲を囲んでいるスロープが駅を一周できるよう導いてくれます。

  • 腰掛けられる小さな居場所

  • 傾斜によってできたフードコート

  • 一枚の紙を切ってできたような空間

  • うねうねとした曲線デザインは外にまで続く

そのデザインのコンセプトはプラットホームにまで続いています。

  • コンコースのスロープデザインがプラットホームまで続く

  • 構造体の一部を利用したベンチ

デレフト駅/デレフト, オランダ

デレフト出身の建築家Mecanooによってデザインされ、天井にはデレフトの地図が表現されています。プラットホームから立ち上がり、思わず写真を撮る人々もいました。

  • 地図柄の天井

  • 青を基調としたモザイクタイルの柱

エスカレーターを上った後も、さらに天井のデザインは続きます。ここでは青いモザイクタイルの様な柱と壁のデザインが現れます。これは、この地方で有名なデレフト焼きからインスパイアされたものだそうです。

  • キレイな藍色が特徴的なデレフト焼

  • オランダらしく駅は自転車置き場直結

  • 入口を小さくすることで、小さいスケールへと落とし込んだ駅

外観には高低差がつけられており、これは、デレフトの街のスケール感をとなじむようにデザインされたためです。
また、デレフトでも他のオランダの都市と同じく運河が流れていますが、そのスケールの小ささもこの街の特徴です。駅というと、どうしてもスケール感が大きくなってしまう建築ですが、2階に市民センターなどを持ち合わせつつ、2階とは切り離して入り口を工夫するなど非常に細かくデザインされた駅でした。

小さなスケールで構成されたデレフトの町

訪れた日に、たまたまマーケットが開かれていました。街の小さいスケール感と運河とマーケットの通りがとってもかわいいんです!今回訪れたオランダの都市の中で、一番好きでした。日本では、あまり有名ではないかもしれないデレフト。地球の歩き方にもわずか2ページしか情報はありませんでしたが、街にはヨーロッパからの観光客がたくさんいました。

Hotel de Hallen(寿命を終えた駅の再生)

オランダでは、使われなくなった駅を改修してつくったホテルに泊まりました。そこは駅舎のプラットホームの部分が客室となり、線路部分がラウンジとなっていました。
となりには、同じく改装されたレストラン、フードコート、ショップ、アトリエなどがあり、夜にフードコートを訪れると、非常に賑わっていました。

  • 元プラットホームのラウンジ

  • もとはかなりの大きさのターミナル駅

  • ショップでにぎわうストリート(閉店後)

  • 地元の方々でにぎわうフードコート

横に長いという駅の特性は、様々な用途に転換され、人が集まって過ごす空間として、今も昔も変わらず愛されており、素敵でした。

ロンドンヒースロー空港/ロンドン, ヒースロー, T2

ターミナル2(T2)の建て替え工事に伴いターミナル1(T1)の跡地にT2を拡張し、T2(別称:ヒースロー・イースト・ターミナル)はT1を含んだ巨大ターミナルとなり、2015年にオープンしました。設計はスペインの建築家ルイス・ヴィダル。
北側を向くとハイサイドトップライトから光が入り、南側を向くと光によって演出された、膜天井の大屋根と、全く別の表情になります。

  • 北側を向いた明るい大屋根の表情

  • 南側を向いた大屋根の表情LEDによる空間演出

屋根のデザインはチェックインロビーの吹き抜けを介して駐車場棟にまで連続しています。

  • 吹き抜けにかかる大屋根

ターミナル5(T5)

2008年に開業したT5はイギリスの建築家リチャード・ロジャースによってデザインされました。以前スタッフレポートで書きました、スペインのアドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港 ターミナル4と同時期にデザインされている事もあり、デザインに類似した箇所が多々ありました。

  • ワイヤーによる引っ張る力によって実現した大スパンの大屋根

  • ワイヤーの引き始めのディテール

  • ワイヤーを支えるさらに小さいワイヤーのディテール

  • 大屋根を引っ張る表しの構造体

構造をシンプルし、隠さずデザインすることで、逆にスッキリとしたデザインになっています。
到着階の天井はバラハス空港 ターミナル4とほぼ同じデザインで、こちらには照明ではなく、レフ版が使用されていました。

T5はイギリス国内で最大の建物であり、2019年のイギリス・スカイトラックス社による「ワールド・エアポート・アワード」で、ヒースロー空港のT5はシンガポール・チャンギ国際空港のターミナル3を上回り、「世界最高の空港ターミナル」となりました。一般区域しか見ることができず残念でしたが、次回はブリティッシュエアウェイズでロンドンに行き、ぜひT5を利用したいです。

スキポール空港/オランダ, アムステルダム

乗り継ぎ時間を楽しく過ごすせるアイディアが充実しているスキポール空港。設計はオランダの建築家ベンテム・クラウェル。

  • 省時間・省人化を図る自動バゲージドロップ

  • なんとゲートラウンジの中に美術館があります

番外編(トランジットで立ち寄った最新博物館)

今回往路はカタールでトランジットし、できたばかりのカタール国立博物館(ジャンヌーベル)へ行きました!ちなみにこの日のカタールの気温は47℃。体験したことのない暑さの中、命がけで外観の写真を撮りました。

設計のコンセプトは「砂漠の薔薇」
砂漠では石膏などが自然現象で固まって花に似たような形になるもので、これを「砂漠の薔薇」と呼び、アラブの人に愛されています。

  • 唯一無二の個性的外観

  • 自然にできた形とは思えない「砂漠の薔薇」

  • 外観の意匠は内部にも連続します

  • 展示空間とは全く違う世界観のミュージアムショップ