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国際的な専門知識

INTERNATIONAL EXPERTISE

国際色豊かなスタッフの見識で、言語・文化・風習の壁を越え、世界の街に にぎわいを

Introduction

JMA,PCPAJは、アジアを中心に海外のプロジェクトも数多く手がけています。国や地域が変わっても、私たちが成すべきことは、街づくりの視点から魅力的な建築物や空間を創造し“デザインオンレスポンス”の手法を用いて、そこに暮らす人々に豊かさ、感動を与えることを使命としていくことに違いありません。国内の案件と同様に、敷地固有の環境を把握し、文化や歴史を理解し、そのプロジェクトに関わる人々と対話を重ねてつくりあげていきます。

こうした私たちの手法は、いかに現地のクライアントや協力会社と綿密なコミュニケーションを取れるかに、成否がかかっています。現在、JMA,PCPAJには、多国籍のスタッフが在籍しており、それぞれがネイティブの会話力、文化風習に関する知識、築いてきた人脈を活かして、海外のプロジェクトで活躍しています。

今回の座談会では、JMA,PCPAJの海外展開に大きく貢献してきた3名のスタッフが、これまでの経験をもとに、海外でプロジェクトを成功させるために重要なことについて語り合いました。私たちの仕事のスタイルが、国境を越えて支持される理由を紹介します。

PEOPLE

  • Issei Iwata岩田 一成

    プロジェクトディレクター
  • Seung Jun全 勝 (元所員)

    インテリアデザイン室
    アソシエイト(掲載当時)
  • Ray Wu呉 勝陽(元所員)

    プロジェクトディレクター

ローカルルールやスケジュールへの感覚など、日本との違い

岩田
台湾出身の呉さんと韓国出身の全さんは、それぞれ自国や同じ文化圏の案件で、デザイナーとしてだけではなく、現地のクライアントや協力会社との窓口としても貢献してくれていますね。呉さんとは、JMA,PCPAJが海外案件を増やしていく中で、社内でチームを組むようになったのだけど、一緒に中国の案件をたくさんやりましたね。通訳兼デザイナーみたいな感じで、私の説明を翻訳して伝えてくれました。
私がアルバイトだった時期を除けば、初めて岩田さんと一緒に仕事をしたのは2007年の台北のコンペでしたね。入社して間もない頃で、私はまだ日本語がほとんど話せなくて、リーダーの岩田さんと英語でコミュニケーションをとっていたのを覚えています。その後どんどんアジア圏の仕事が入り、2011年には上海や慈渓など、中華圏で計4件を担当していました。あの頃は岩田さんも私もとても忙しくて、一カ月に一度は現地に打ち合わせに行っていたので、あまり東京の事務所にいませんでした。忙しかったけれど、勉強になり良い思い出です。
中華圏での仕事を始めたばかりの頃の岩田さんは、日本との違いに戸惑ったと聞いています。私は幼い頃から韓国と日本を頻繁に行き来していて、慣れ親しんだ日本での仕事にはすぐに順応できました。けれど、JMA,PCPAJに入社する前に働いていたスウェーデンでは、文化や国民性の違いを実感しました。ニューヘイブンのPCPAとも長く仕事をしてきて、アメリカでの経験が豊富な岩田さんでも、慣れない土地でプロジェクトリーダーを担うのは大変だったと思います。最も違いを感じたことは何ですか。
岩田
仕事の進め方から全く異なっていると思いました。クライアントとこちらのスケジュール感覚が全く合わずに話がまとまらず、ストレスを感じたことも多少はありました。特に行政機関への申請に時間がかかる。その所要日数もまちまちで、通常は数カ月だとされているものに、数年を要することも珍しくないらしいと聞いて驚きました。「なぜだろう」と不思議がる私に対して、「こんなものですよ」と呉さんは気にも留めていなかったですね。
工期に限らず、想定通りにならないことは多いです。そしてそれがプラスに働く場合もあるのが、中華圏での仕事の面白いところだと前向きに考えています。例えば高さ制限100mの場所で150mの建物を提案し、結局は間をとるような形で、130mにすることで決着がついたことがありました。パートナーとなる現地の設計事務所の調整力に左右されるところも大きいと思います。
岩田
日本は緻密で細やかなことが得意だとよく言われるけれど、それに慢心せずに、海外のプロジェクトでは、単に言語の違いだけではなく、国民性や慣習を理解し、順応することが大切だと感じました。
日本は、韓国と比較しても仕事が特に丁寧だと思います。韓国では時に工期に間に合わせることを第一にして、まず見栄えがいいものをつくってから、クライアントに予算があればオープン後にきちんとつくり直すこともあります。私が担当したあるプロジェクトがたまたまそうだったのですが、期日までに完成しなかった場合に、ペナルティがあったり容積が削られたりすることがあり、そういったことが影響している場合があるかもしれません。そして韓国での仕事は、ローカルの建設会社の力が強いのも特徴です。彼らは申告書類を作成する段階で自分たちの意図を盛り込み、私たちが作り上げたデザインコンセプトと多少ズレがあったとしても、彼らの意図を優先させることもあります。

支持されている、対話を重ねてフレキシブルに応えるスタイル

岩田
海外のクライアントと仕事をしていて感じるのは、建築デザイナーに対して敬意を抱いてくださるということ。そしてデザイナーに与えられる裁量も大きい。国内の案件では、ゼネコンが総合的に管理する案件に対して、デザインに特化して参加することも多い。だから海外案件の方が、我々が担うことが多いですね。
中華圏では、自分たちの文化と異なる国、特に日本や欧米のデザイナーのノウハウを信頼しています。そしてこれはアジア全般に言えることですが、日本の技術は世界ナンバーワンだと思ってくれている人が多いんですよ。
海外の著名な建築家を尊重する傾向は韓国も同じです。日本や欧米の建築家に憧れの気持ちを抱いています。ネームバリューが優先され、大まかなラフスケッチでも、権威あるビッグネームの建築家が描いたものは特に有難がるという風潮がどうしてもあります。
岩田
世界でもビッグネームと言われる建築家は、クライアントから絶対的な信頼が寄せられるのであれば、自分のスタイルを突き通すこともできる。実際、ビッグネームの裁量にすべてを委ねるクライアントがいることも確かだと思います。しかし一方でJMA,PCPAJは、そうしたやり方とは正反対の方法でクライアントの信頼を得ているんじゃないかと思います。
そうですね。クライアントが望んでいることについて対話を繰り返して、私たちのデザインアイディアを融合させながら、クライアントや現地の協力会社と共につくりあげていくというやり方ですね。私が担当する韓国の案件では、JMAが自分たちのために何度も海を渡って来てくれて、多様なバリエーションを提案してくれると喜んでいただきました。
岩田
我々のフレキシブルな対応が、韓国でも喜んでいただいているんですね。デザインのオプションをたくさん用意して、相手の反応を見ながら絞り込んでいくプロセスがクライアントにとってはわかりやすいのかもしれません。
しかもそのオプションそれぞれについて、しっかりとしたコンセプトを語れるからこそ、クライアントもなるほどと納得してくださるんです。そして代表である光井さんは話題が豊富で、何より気さくですよね。自分たちで言うのもなんですが、話しやすく親しみがもてるので、クライアントも自分の意見を本音で伝えられるのでしょう。
「問い合わせをしてから2,3日で、こちらに来てプレゼンをしてくれた事務所は初めてだ」と韓国のクライアントに驚かれたたことがあります。プレゼン後に食事をしながら歓談した際も、「JMAは話題が豊富で楽しくて、いろいろ聞いてくれるから率直に意見を言えるのがうれしい。話しやすく、なんでも相談できる」と喜んでくださいました。
岩田
クライアントや関係者の望みに、すぐに対応することの大切さは、私もこれまでの経験から学びました。そして海外でも国内のプロジェクトと同じように「話しやすく、相談できる」と思ってくださるのは、クライアントの意見を尊重し、ともに建物をつくりあげていく我々のような会社にとってはとても大切なことですね。中華圏や韓国をはじめとする、アジア諸国では、食事やお酒を一緒に楽しんで語り合うことで、お互いが次第に心を開いていくという経験を得ました。私も呉さんも、中国や台湾ではたくさん飲んだね(笑)。
そうそう、なつかしいですね。光井さんと、岩田さんと、私の3人に対して、クライアントは20人くらいいて、プレゼン後の昼過ぎから宴会をしたことがありましたね。こちらは先方の一人ひとりと乾杯をしたから、とんでもない量のお酒を飲んで私は酔いつぶれてしまって(笑)。
岩田
日本では、お客様の前で泥酔した姿をさらしてしまうのは失礼にあたるけれど、中国では、「よくぞそこまでつきあってくれた」と喜んでくださる。それで一気に距離が縮まることを経験しました。
韓国でもそれは同じだと、全さんと一緒に仕事をしたときに思いました。とにかくどの国でもクライアントや関係者と乾杯しました。アジアの案件では国内以上に、お酒の席を楽しめると、クライアントとの関係を築きやすいのかもしれませんね。
岩田
国内でもそうですが、プレゼン以外の場、例えば宴会の席で話したことの中にも、デザインのヒントがある。プロジェクトの最適解を見つけるために、こちらの考えを一方的に伝えるだけではなく、クライアントから意見を聞きだし、協力しながら建物をつくっていくわけだから、親睦を深める場も大切です。

雑談に隠れた本音からも、クライアントの要望を感じ取れる

自分の考えを曲げないデザイナーも多い中で、JMA,PCPAJはクライアントからの要望に対してNOとは絶対に言わない。クライアントにしてみれば、JMA,PCPAJは必ず対応してくれて、出した問いかけに対してそれを超える提案を返してくる会社だと、信頼してくださっていると感じます。
私は海外の仕事を重ねる中で、実際に会って話すことの大切さを痛感しています。顔を合わせて会話をしてはじめて、クライアントと分かり合えたと感じられます。
岩田
クライアントと対話を重ねていく我々のやり方は、コミュニケーションがカギになるから、齟齬なくやり取りをするためにも、二人が担っている役割は大きいと思いますよ。
コミュニケーションのロスを減らすこと、そしてクライアントの心をつかむことが、全さんや私のように現地の言葉や文化、そして様々なルールを知るスタッフの役割ですね。そのためにクライアントの発言を自分なりに吸収して、問題点を整理して、わかりやすく社内に伝えています。人と人の間に立って伝え終わると、とても疲れることもありますが、重要な役割を任されているという自負はあります。
共通語である英語が話せる人であっても、やはり母国語で会話する方が楽で、雑談の中から本音も聞き出せます。細かなニュアンスを伝え合えるから、誤解も生じにくい。また韓国語の場合は表現がダイレクトなので、先方の意見を光井さんや自社のスタッフに伝えるときは軋轢が生じないようにオブラートに包んで意訳することもあります。情報収集のために、そして関係構築のために、現地の言葉で、国民性や文化を理解しながらやりとりできるのは強みになるのだと感じています。
岩田
最後に聞いてみたいのですが、二人は日本で仕事をしていて、素晴らしいと感じ、母国の建築に取り入れたいと思っていることはありますか。
日本に住んでいて違いを感じるのは、台湾ではまだまだ“街づくり”という視点から開発がなされていないように思います。いい建物をつくることには関心があるけれど、その周辺のことにはまだ興味や関心がないように思えます。日本ではJMAでもマスタープランを用いた街づくりを提案していますが、台湾でもその場所に求められる建物をつくる仕事をしてみたいです。
私は今、特定の箇所に関心が向いていて、日本のトイレは特に素晴らしいと思っています。トイレは隠すべき場所であり、建物内の目立たない箇所にあるにもかかわらず、日本では細部まできちんと仕上げています。韓国では、高級なホテルやデパートに行けばきれいにつくってはいるのですが、日本ほどトイレを美しく、メンテナンスしやすくつくるという意識はそれほど高くはないようです。韓国でも、見えない、あるいは目立たないところまで細やかに気を遣って仕事をしたいと思っています。
岩田
街づくりという壮大なスケールの話をしてくれた呉さんと、トイレという建築に欠かせない特定のスペースへの関心を示してくれた全さん。二人に共通するのは、そこに暮らす人や利用する人の心の状態を考え、配慮が行き届いた、そこにあるべきデザインを手掛けたいという想いですね。それはまさにJMA,PCPAJの理念と重なるところ。これからもクライアントとJMA,PCPAJの橋渡し役としても活躍し続けてほしいです。そしてぜひ母国でも活躍するデザイナーになってほしいですね。期待しています。

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