多摩川に面する幅約250mにも及ぶ約1.4haの土地は、京王線聖蹟桜ヶ丘駅から至近の立地の良い土地であったが、川辺を積極的に利用する人々も少なく、長らく手つかずの状態であった。A～C街区に分割されたその広大な敷地に、A街区とC街区に分譲マンション、B街区に商業施設の３棟が計画され、３街区に跨るマスタープランを検討することからまちづくりは始まった。またＢ街区の整備に合わせて聖蹟桜ヶ丘駅と多摩川側とをつなぐ「親水軸」が整備されることもまちづくりの中では重要な要素であった。

我々は川辺と活かしきれていない地域の問題を鑑み、本まちづくりが多摩川と聖蹟桜ヶ丘駅をつなぐ“結節点”となるべきであると考えた。新たなまち全体に「人々が憩い賑わうテラス」のような川辺を活かした内外空間を創出し、多摩川までの人の流れをつくることを目指して“RIVER SIDE TERRACE”をまちづくりコンセプトとした。３街区に及ぶ広大なまちづくりには多様性と一体感の創出が必要となる。開発としての一体感や統一感を創出しながら、デザイナーの個性によって多様性を表現してもらうため、我々は一定のデザインコードを定め、１つの街としてのまとまりを創ることにした。

「広大な敷地に散りばめられた人々が憩う賑わいのテラス」のスケール感に配慮するために、建物は「壁面を長大にみせないように縦方向の分節を行うこと」と「低層部には周囲の自然になじむベージュ系のアースカラーの自然素材を用いること」をデザインコードとした。一方、広い空へのスカイラインを描く建物頂部のデザインや、多摩川からも駅からもよく見えるタワーのベース色は、それぞれの個性となる多様性を表現する余白として残した。ランドスケープはまち全体を通して舗装材を統一することによって、街区の境が見えないような工夫を凝らす他、樹種も共通のものを植栽することで、広大なまち全体を１つの拠点としてみせている。

まちの東側、京王線の線路に面するA街区には、タワーマンション「Brillia Tower 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING RESIDENCE（2022）」が計画され、街区内には誰でも利用可能な大きな芝生広場が設けられ、それに沿うようにベンチやパーゴラなどの賑わいの仕掛けをつくっている。タワーのファサードは曲線から直線へと変化する象徴的なデザインとし、京王線で新宿方面から多摩市へ入る際の玄関口にふさわしいランドマークとなっている。まちの中央のB街区にはA街区の広場に隣接するように商業施設「サクテラスモール（2023）」が計画され、カフェやフィットネス、保育園などが入っている。この商業施設は両サイドの分譲マンションを含めたまちの賑わいの核となっており、広場や川辺の利用者の賑わいに相乗効果を与えている。またサクテラスモールの２階デッキが聖蹟桜ヶ丘駅側からの歩道橋と接続し、親水軸として整備され、マンション住人以外の商業利用者のアクセス性も向上している。まちの西側のC街区には中層の分譲マンション「Brillia 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING TERRACE（2024）」が計画され、ランドスケープには街に潤いを与える多くの樹木が植えられ、その緑量ある特徴的な空間を楽しむことができる憩いの場となっている。ファサードは、樹木が寄り合うようにタワーとクラウンまで連続する矩形のボリュームが集合しているようなデザインとし、分節しながらも１つのまとまりある存在感を放っている。

この一連のまちづくりを通して、聖蹟桜ヶ丘駅から多摩川に向けた人々の流れを生み出す吸引力あるまちを多摩川サイドにつくることが出来たのではないかと感じている。多摩川という自然豊かな景観を活かした「聖蹟桜ヶ丘」の親水都市としての側面によって一層の賑わいが生まれることを願っている。

Brillia 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING TERRACE
https://www.jma.co.jp/works/brillia-seiseki-sakuragaoka-blooming-terrace/

サクテラスモール
https://www.jma.co.jp/works/saku-terrace-mall/

Brillia Tower 聖蹟桜ヶ丘 BLOOMING RESIDENCE
https://www.jma.co.jp/works/brillia-tower-seiseki-sakuragaoka-blooming-residence/