今回訪れた2月のヨーロッパはまだまだ真冬です。朝は8時でもまだ薄暗く、17時には日が暮れてしまいます。
長い夜を活かすため、旅のサブテーマとして、さまざまなホテルを体験してきました。
コンラッド ブリュッセル(ベルギー ブリュッセル)
ブティックの立ち並ぶルイーズ通り沿いにあり、267室と市内でも有数の規模を誇る5つ星ホテルです。
東京のコンラッドは和を取り入れたコンテンポラリーなデザインですが、こちらはモダンヨーロピアンスタイルのエレガントなインテリアデザインです。
ラウンジのあるロビー階はクラシカルで、木調の落ち着きと格式を感じさせるデザイン、ゲストルーム階は白とラベンダー色を基調とした清潔感のあるインテリアでまとめられています。
ラウンジではイギリス式、パリ式とブリュッセル式(チョコレートとスイーツ尽くし!) のアフタヌーン・ティーを楽しめます。
ブリュッセルの人たちは本当に甘いものが大好きらしく、街中にチョコレートショップやワッフルスタンドがあります。朝食でも高速列車の中でも甘いデニッシュやペーストリーがサーブされ、どこも甘い香りであふれていました。
ロイド・ホテル(オランダ アムステルダム)
このホテルは、1921年に建てられた港湾施設がオランダを代表する建築家集団MVRDVによってリノベーションされたものです。
インテリアはイネケ・ハンス、リチャード・ハッテン、アトリエ・ファン・リースハウト、ヘラ・ヨンゲリウスなどなど、オランダ出身の多数の有名デザイナーたちが手掛けています。
部屋によって1ツ星~5ツ星まで予算に応じて選ぶことができ、すべての部屋が異なるインテリアとなっています。アムステルダムの新しい建物は奇抜な外観のものが多いですが、インテリアでここまで遊んでいるものはほかに類を見ません。世界中の学生からVIPまで、デザイン好きのあらゆる人が集うホテルです。
上層階からはアイ湾の再開発を見晴らすことができ、1階のショップとカフェはお洒落なスポットとして賑わいを見せています。
客室内のアメニティはほとんど用意されておらず、各リクエストにはスタッフが対応してくれます。(つまり、ひとつひとつコミュニケーションで解決するか、共用施設を利用することが必要となります。)
ちなみに4ツ星の部屋を利用しましたが、事前にリクエストしたのにバスタブも冷蔵庫もないし(せっかくいろいろなビールを買い込んだのに!) 、テレビはブラウン管のちいさなものに古いアニメが流れていてアート状態、直床+高天井で寒い、カーテンもないので微妙に光が漏れる…、などなど、今回の旅程の中でもかなりハードな経験でした…。
サヴォイ・ホテル(イギリス ロンドン)
1889年に開業したロンドンで最初の近代的なホテルで、蛇行するテムズ川を一望できる、ロンドンを代表する5つ星の最高級ホテルです。2.2億ポンド(約300億円)を投じた改修を終え、2011年にリニューアルオープンしました。
“エドワーディアン”と呼ばれるイギリス流のロマンティックなスタイルと、アールデコ様式の美しいインテリアに彩られています。
ちなみに、ビートルズのホワイト・アルバムに「サヴォイ・トラッフル」という曲がありますが(サヴォイのトリュフを食べたら他に何もいらないよ、という曲です)、ここサヴォイホテルのトリュフチョコレートのことだと言われています。
ロビーには大きなチェックインカウンターはなく、到着したらすぐ部屋に案内してくれて、客室内でチェックインを行うことができます。また、宿泊者は無料でフィットネスやスパを利用することができ、マシンを使ったワークアウトやプール、サウナなどで、それぞれの滞在を満喫できます。
日本のようにゲストを祀り上げるような接客ではなく、とても丁寧で品がありながら友人のようにリラックスしたスタッフの対応には、ラグジュアリーのあり方やもてなしの概念について考えさせられました。
オテル・ドゥ・プティ・ムーラン(フランス パリ)
ここはパリ最古のパン屋が店を構えていた17世紀の建物を、4つ星のブティック・ホテルとして再生した事例です。
歴史ある街並みと新しい文化が混在するマレ地区の中心部に位置し、文化財に指定されているファサードと1階のパン屋の外観は昔のまま、インテリアはファッションデザイナーのクリスチャン・ラクロワが手掛けています。
全17室、すべて異なるインテリアで、クチュールのように隅々まで行き届いたロマンティックでどこかキッチュなデザインがとても魅力的です。
色や素材の使い方、料理やスタッフの制服まで、どれもカラフルで独創性のある世界観が表現されていました。
ラ・メゾン・シャンゼリゼ(フランス パリ)
2011年秋にオープンしたばかりの、ファッションデザイナーのマルタン・マルジェラのプロデュースによる5つ星ホテルです。
インテリアはシンプルながらクラシックスタイルを現代風に再解釈したアヴァンギャルドなテイストが取り入れられています。
洗練されたデザインでありながらホスピタリティに溢れ、スタッフの方々も親しみやすく、部屋も大変使いやすくできていました。
ゲストルームは大きくクチュール・コレクション17室とコレクション・ブティック40室から構成されており、オートクチュール(高級注文服)とプレタポルテ(既製服)の様に、クチュールは、よりラグジュアリーで世界観が体現されたインテリアとなっています。
室内のデザインは白を基調とし、コンテンポラリーですっきりとしたデザインです。必要なものは過不足なくデスクやクローゼットにすべて用意されており、ストレスフリーで滞在を楽しむことができます。
共用部では壁に描かれたトロンプルイユ(だまし絵)や照明、アートなどの空間的な遊びがミニマムなディテールによってまとめられ、パリの粋を感じられるスタイリッシュな空間が実現していました。
今回の視察旅行では、それぞれにテイストの異なる5つのホテルに宿泊しました。
一言で「ブティック・ホテル」や「高級ホテル」といっても、そのホテルが位置する都市やコンセプト、建築家やデザイナー、もてなし方によってまったく異なった経験となりました。
ただ風雨をしのいだり食事をしたりする場所ではなく、短期間の利用が目的だからこそ、その街や人、時代のニーズを明確に反映しながら、ホテル側から都市のあり方に対する独自のメッセージを発信する場なのだと実感しました。
多くの都市が成熟し、さまざまな物事に「デザイン」という付加的価値への需要が高まっている中、アートやデザインをコンセプトにしたおしゃれなホテルは多いですが、見た目のよさに織り込まれた高揚感と快適さの共存するデザインの重要性を感じた滞在となりました。
以上、2回に続けて、高木がお送りしました!