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境界を越えて

BEYOND BOUNDARIES

建築・ランドスケープ・インテリア、職能を越えた協働がプロジェクトの価値を最大化する

Introduction

JMA/PCPAJは、在籍する約60名のスタッフの多様性が強みです。外国籍のスタッフや女性スタッフも多く、また幅広い年代が活躍しています。中でも特筆すべきは、各分野のスペシャリストの存在です。JMA/PCPAJには、ランドスケープやインテリアを専門とするチームを有するなど、数多の職能の融合が、JMA/PCPAJのデザインの可能性を広げています。

そして高い専門性をもつスタッフそれぞれが、その職能を発揮するだけではなく、職種間の境界を越えて協働するからこそ、千差万別なクライアントの要望を潜在的な部分まで理解し、環境や風土、歴史や文化が異なる場所に応じて最も価値ある空間を提供できるのです。

JMA/PCPAJがなぜ、多彩な職能を協働の中で活かしあえるのか、建築、インテリア、ランドスケープの各チームのスタッフが集い、語り合いました。互いの境界を越えるからこそ生まれる“究極の柔軟性”を、実例を交えて紹介いたします。

PEOPLE

  • Yukinobu Nakano中野 幸伸

    執行役員 東京事務所所長
    (掲載当時)
    (現上席執行役員
     東京事務所所長)
  • Kosuke Yokoyama横山 幸佑(元所員)

    インテリアデザイン室 室長
  • Taido Yamano山野 太道

    インテリアデザイン室
    シニアアソシエイト
    (掲載当時)
    (現インテリアデザイン室 室長)
  • Junko Anazawa穴澤 順子(元所員)

    ランドスケープデザイン室
    アソシエイト
  • Satoshi Matsumoto松本 賢

    ランドスケープデザイン室
    アソシエイト(掲載当時)
    (現シニアアソシエイト)

職域にとらわれず出し合うアイデアが、課題をゴールに導く

中野
JMA/PCPAJが多様性に満ちた組織であるメリットは、ここにいる誰もが実感していると思うのだけれど、建築チーム、インテリアチーム、ランドスケープチームの三者のシナジーが大きな成果を生んだ事例といえば、最近の案件ではヒルトン沖縄北谷リゾートが分かりやすいのかな。
横山
そうですね。デザインを我々が請けることになり、建築・インテリア・ランドスケープを一括で担ったプロジェクトでした。この案件にはランドスケープ室の穴澤さんとインテリアデザイン室の山野さんが携わっていましたね。
穴澤
このプロジェクトには大きな課題があって、海岸沿いにあるリゾートホテルの依頼でありながら敷地が海岸に接しておらず、元々埋立地だった敷地にリゾート感を演出しなければなりませんでした。建物や敷地の境界を越え、連続した風景をつくりだすことでホテルの付加価値を高めようと、みんなで議論を重ねたのを覚えています。
松本
ホテルを訪れる人の視点から見える景色について、何度も検証してアイデアを出し合ったと聞きました。とくに正面入口のファサードからエントランスホールにかけて、チーム間のやりとりが多かったとか。
山野
インテリアチームからの提案で、車寄せの庇が、そのまま屋内にまで入り込んだデザインが採用されましたね。エントランスロビーはホテルを訪れる人が必ず通り、外と中をつなぐ空間。だからこそ、車寄せポーチの庇から内部空間まで、デザインでつながりをもたせましょうと。宿泊客は車寄せからエントランスロビーへ庇と天井によって導かれる演出になっている。
中野
庇のデザインは、最初は建築チームだけで考えていたのだけど、インテリアチームから屋内の天井から繋がるアイデアが出てきて、そのダイナミックな形状にクライアントがとても満足してくださった。インテリアチームの発想が外観デザインに活きたケースですね。
横山
2階レベルに計画されたアプローチとなる庇の部分は、ゲストが見上げながら建物に入るシークエンスにおいても、外装としても重要だし、内装に目を移すと、窓からの景観を美しく見せる空間であることから、天井はデザインの要素としてとても重視される。内観と外観では見え方やスケール感に必ず違いが出ますし、素材や施工方法も異なりますので、いかに建築とインテリアの境界を感じさせないように考えるかが大事ですね。
山野
そうですね。私達は、外部と内部の空間が違和感なくつながるようにインテリアチーム側から積極的にデザインを提案しました。そしてランドスケープチームとの協働はさらに多かったですよ。2階にあるエントランスロビーに入ってくると、窓の外に広がるのは沖縄の海と空。その景色を美しく見せるために、視線をコントロールし、主役の“海”と“空”を際立たせるために、余計なものを見せない仕掛けが必要で、穴澤さんとは幾度も話し合い、世界観を一緒につくっていこうということでアイデアを出し合いましたね。
穴澤
山野さんの言うように、エントランスロビーからの景色が一番の見せ所であり、ドラマチックな風景でリゾート感を演出したいのだけど、視線をコントロールしないと下方にある堤防が視界に入り、印象を損ねてしまう。それを隠すために人の目線の高さを徹底的に確認し、下方への視線をコントロールするカスケードを設置しました。見返すと反対側の窓からは山が見えるので、こちらも下の方に街の雑踏が見えてしまうため、植栽のマウンドを設けて視線を遮っています。外界から縁を切る工夫は他にもいろいろあって、近隣の建物を見えないように沖縄の城壁であるグスク壁をモチーフにした外周の壁を作り、リゾートホテルらしい風景づくりの工夫を凝らしました。

すべてのスキルが尊重されることで、生まれる付加価値

中野
実際にエントランスができる二階からの視界を確認するために、着工前に高所作業車に乗って撮影していたね。断面図を書いて、エントランスから中に入って立った位置、展望までの距離と高さを算出して、綿密にシミュレーションをするなど、妥協がなかった。
山野
我々もバリエーションの違うアイデアスケッチ、パースを何枚も用意して、実際にどう見えるかについて検証を繰り返しました。そしてクライアントとの協議の中で、建築のダイナミックな造形と、シンプルに沖縄の海の美しさを見せることの二つが何よりも大切だということがつかめたんです。そこに辿りつくまでに、ほんとうにスケッチをたくさん描きましたよ。
穴澤
確かに、皆で模型も複数用意しましたね。建築側、インテリア側、ランドスケープ側と、様々な見地からアプローチするために、1/200、1/100、さらに1/50、1/20の詳細模型まで、違うスケールの模型をつくって、CGと併せて議論を重ねました。
横山
インハウスでデザインできるからこそ、妥協なく意見をぶつけ合えるというのはよいですよね。情報共有のスピードも違います。何よりインテリアを専門とする我々からすると、プロジェクトのスタート時点からブレインストーミングに参加でき、ときにはイニシアチブを取れるJMA/PCPAJの環境はとても恵まれていると思います。インテリアチームの誰もが、自分達の持つスキルを最大限に活かそうと、意欲的になれます。
松本
それは我々ランドスケープチームでも感じています。ランドスケープデザインは、建築家が配置計画やボリュームまで決めた後で、その余白を埋めるような仕事もあります。そういったプロジェクトのようにある程度のフェーズから参加する場合と、最初期段階から参加するプロジェクトとでは我々のスタンスも意欲も異なります。
山野
私達インテリアチームはランドスケープチームとの協働が多いので、こちらこそとても助かっていますよ。共用部のエントランスやロビー、ラウンジなどを手がけることが多いのだけど、それらは人が訪れ、また次の場所に行くまでのストーリーがある場所。当然ながら外部空間のランドスケープデザインとの関わりが強くなる。結婚式場のリニューアルの案件で、クライアントとの対話を重ねるうちに、ランドスケープチームの力を借りることになったこともありましたね。最初はインテリアに関する依頼だったのが、建物のファサードから公道までの小さなスペースを演出することになったんです。その敷地にあるべき建築やインテリアを追求しているからこそ、JMA/PCPAJではランドスケープチームの役割を重視しているのだと思いますよ。
松本
期待に応えられるように頑張らないと。現在の取り組みとしては、計画敷地の気候、風土を確認したり、植生をはじめとする様々な環境を調べたりなど、我々の広域な視点でデザインアイデアのきっかけをつくっています。建築、インテリア、ランドスケープが一体となったデザインアプローチが付加価値を生むことを、さらに実績を増やし、社外にアピールしていきたいですね。

触発し合えるフラットな体制と、個性を包括する理念

横山
課題に応え、且つ街そのものにも付加価値を生む提案、ということであれば、キラリトギンザのプロジェクトはまさにそのような案件ですね。敷地は銀座と京橋のちょうど中間地点にあり、銀座の四丁目交差点と比較すると人通りが多くない場所で、いかに人の賑わいを生み出すかが課題でした。我々はその課題への回答として、銀座にないものをつくることで、人の好奇心を刺激し、人が集う場をつくれないかと考えました。日本を代表する街でありながら、銀座には街路樹がありません。それは道路下を通る地下鉄と周囲の地盤の影響で、植樹できないためです。ならば建築内に“立体庭園”をつくるのはどうかと考え、建物内の4階テラスに樹木を植え、屋上には庭園を設けました。そこには銀座のメインストリートでは見られない、大ぶりの樹木を見ることが出来ます。人が集う空間をつくってほしいというクライアントの要望に応えながら、日本を代表する銀座という街に自然を感じる空間をもたらしたのです。それは結果的に、人々を建物上層階へ呼び込む効果にも繋がりました。
松本
ランドスケープデザイナーの立場から見ても、とても興味深いプロジェクトだと思いますよ。最上階の結婚式場には木々が立ち並ぶ屋上庭園があり、その屋上の樹木から木の葉が舞い降りて各階エレベーターホールへ続いていく、というデザインストーリーも見事でしたね。
横山
建物全体のコンセプトを、どうインテリアデザインにも反映させていくかが重要だと考えていました。吹き抜けになっているエレベーターホールの壁面ガラスに、実物の葉を散りばめて挟み込むことで、エレベーターで行き来するお客様が、象徴的なテラスや屋上の樹木から各エレベーターホールに葉が舞い降りているかのような雰囲気を体験して頂き、建築とインテリアが一続きの空間体験になっていることを無意識的にも感じてもらえればよいかと思いました。
穴澤
今回のような議論が象徴していると思いますが、私達は専門性の高い技能をもつ人が集まっている一方で、部署としての縦割りがないのが強みだと思います。オフィスのレイアウト自体も、部署ごとに区切られていない。だからインテリアの人達が議論しているのも聞こえるし、建築の人が光井さんと話しているのも耳に入ってくる。私も普段から耳をそばだてるようにしていて、たとえば向こうの方で「壁面緑化」や「生物多様性」について話しているのが聞こえると、さあ、ランドスケープの出番だぞと意識したりもします。年齢や役職に阻まれない風通しの良さも、デザインディスカッションが深まる一因だと思うし、横山さんのキラリトギンザの例のように、柔軟な発想も生まれてくるのでしょう。
横山
時代と共に複雑化されていく社会に対応するため、デザインも各分野の専門化がどんどん進んできていると思います。それによって、各分野のデザインクオリティを底上げし、全体としてより洗練されたデザインへと昇華されていくわけですが、同時に、各分野の境界線をお互いが強く意識する結果にも繋がっており、各々の限定的な視点でのデザインに陥る危険性をはらんでいます。いかに各分野の境界線を越えてシームレスにデザインを考えていくことができるか、今日の我々デザイナーが考えていくべき課題の一つでもある気がします。JMA/PCPAJでは、各分野の専門性の高いスタッフが同じ組織の中で共同できるため、境界を気にせずに気兼ねなく各々の視点から物事を議論し、創造していくことができます。先ほど話したヒルトン沖縄北谷リゾートのスケール感の整合性も含め、空間を利用する人も違和感なく感じられるはずです。
中野
そして代表である光井純を含めた社員全員が、フラットな組織であることも大きい。キャリアや職能によって担う役割は違っても、年配者も新人も互いに「さん」付けで呼び合い、全員で力を合わせて仕事に取り組む。私も現場はやはり楽しくて、先日インテリアの模型をつくりました。老眼が影響したのか、指をザックリ切ってしまいましたが(笑)。また忘れてはならないのは、男女とも幅広い国籍、多様な専門性を持ったスタッフが集まり、個性を発揮できるのは、光井純というトップが包括的に見ていて、彼の思想を全員で共有できているからこそ。職域や専門の垣根を越えて、様々なバックグラウンドをもつスタッフが柔軟に仕事を取り組めるのは、やはり僕達ならでは、なのだろうね。

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