新型コロナウィルス期を経たライフスタイルの多様化により、住宅に求められる機能やデザインも変容してきた。今回、葛西駅前に計画した賃貸マンションはコロナ禍にスタートしたプロジェクトであり、当初から共用部の考え方や専有部の間取りについて議論を深めてきた。葛西駅前は1Rの供給は多いものの、2LDK・3LDKといった大きなサイズの賃貸供給が少ないというエリア特性に加えて、新しい生活スタイルの１つであるリモートワークのための部屋といった需要等も鑑みた、隠れたニーズにまで応えられる仕様を目指した。

本計画では賃貸マンションには少ない免震構造を採用することで、ゆとりある柱スパンや柱梁寸法の最小化を図り、住まう方それぞれの暮らしによって多様な生活スタイルを選択できる自由度の高い住空間を実現している。生活スタイルの多様化に伴い、通勤通学、趣味での自転車利用者が増えたこともあり、玄関には自転車やベビーカーをゆったりと置ける土間を用意し、隣接する収納スペースと合わせて、趣味の道具や生活必需品が置けるように考えた。また、リビングから続く窓際には、環状７号線沿いの引きのあるゆったりとした景色を眺めながら作業ができるスペースを用意した。このワークスペースは出窓状にバルコニーよりも突出させ、機能が外観デザインと呼応した動きのあるファサードデザインに貢献している。賃貸マンションでありながら、最上階には大きなテラスのある開放的なコミュニティルームを設け、住まう方々の多様な生活スタイルの中に新たな選択肢を用意した。駅が近く便利な反面、車の交通量も多く雑多な雰囲気のあるエリアではあるが、地上の喧騒から少し離れた最上階テラスに積極的な緑化を行い、潤いある生活スタイルや屋外空間の積極利用も楽しめるようにしている。

時代と共に移り変わるライフスタイルに柔軟に対応できる自由度の高い空間を提供し、また、過ごし方の選択肢が増える共用エリアを構築するなど、葛西駅前に新しい暮らしの提案をしている。