鳥海山と日本海に抱かれたまち、秋田県にかほ市に位置する「コンタクトセンター」の新たな業務拠点である。市内３カ所にあった事業所を統合し、総500席の新拠点を計画した。

敷地は南に鳥海山を望む市街地の田園地帯にあり、山体崩壊によって形成された流れ山が周辺に点在している。田園風景の中に島々が点在するこの景観は、隣接する象潟地区では「九十九島」と呼ばれ、松尾芭蕉が「奥の細道」に記した最北の景勝地としても名高い。

我々はこの、にかほの風土に根差したデザインとして「山並み」「島並み」との調和を探求し、「NIKAHO Terrace／島風」をコンセプトとして、風にそよぐ柔らかな「屋根並み」の景観をデザインした。平面計画は執務空間と交流空間を風車状に展開した明快な動線とし、「九十九島」をモチーフとした中庭を中心に据えた。四季を感じ、オープンテラスとしても利用できる中庭の周囲には、打ち合わせスペースも兼ねた回廊を巡らし、執務空間へと自然光を取り入れている。またリラックスして利用できるパーソナルエリアや交流を促す開放的なカフェテリア等、多様な場を創出した。

拠点内に配した開放的なカフェテリアは一般開放され、毎日多くの地域の方々に利用されている（トレーニングスタジオ、研修室も今後開放を予定）。この場所が、気軽に立ち寄ることができる地域の拠り所となり、単なるオフィスとしての存在を越えて「企業と地域の交流拠点」となることを願っている。